古城の兄弟

こんな夢を見た。
断崖に建つ褐色の岩で作られた中世の城に二人の兄弟が住んでいた。二人の性格は対照的だったが、とても仲が良かった。
弟は小柄な美少年で、数学の天才だった。いつも羊皮紙の本を読みふけっていた。しかし、専門の数学者ではなく、論文を発表したこともなかった。ただ楽しみとしてたった一人で新しい公式を発見していた。
兄は大柄なのろまな男だった。学問や本にはまったく興味がなく、いつも海を眺めていた。彼は、12時になると城の上にある鐘を鳴らした。けれど、いくつ鐘を鳴らしたか数えられず、ある時は13回、またあるときは11回鳴らしてしまった。
弟は兄を手伝い、二人は一緒に数えた。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12!
二人は満足し、弟は数学の本を読み始め、兄はただ海を眺めていた。