しばらく前のウェブログにもちょっと書いたけれど、勤めている会社が今年から「クールビズ」(「和製英語」に関するエントリーを英語版のウェブログに書きました http://goo.gl/8rRdU)が緩和されて、それまではスーツからジャケットとネクタイを取るというレベルだったのが、シャツは襟がついていればポロシャツでもよく、また、パンツはチノパンもいいということになった。
実際には、空調の設定温度を上げる代わりにドレスコードが緩和されたという訳ではないので、節電効果には特に貢献しないという意味では、まったくのポーズに過ぎないのだけれども、社員としては楽な格好ができるのはありがたく、実際、今年の夏は地下鉄の駅が暑いので助かっている。
確かに、短パンや七分丈のパンツ、Tシャツやアロハシャツのような派手な柄のシャツ、サンダルは好ましくないというのは理解できる。しかし、なぜか、シャツはパンツにインしなければならないという決まりが特記されていた。
普段、ポロシャツを着ているときはシャツをパンツにインすることはないので、むしろ恥ずかしい。普通のビジネス用のYシャツをアウトにするのはだらしなく見えるということはわかる。しかし、パンツにアウトするようにデザインされているシャツだったらアウトにした方が自然である。そういうところまでとやかく決めるということ自体が気に食わない。
「業務にふさわしい範囲でカジュアルダウンすること(例:襟つきシャツにチノパン、ジーンズ、サンダルなどは除く)」程度の決めごとでいいのではないかと思う。私の場合、個人的には、つれあいの実家に行けるレベルのカジュアルさを考えて服を選んでいる。
カート・ヴォネガットの「スローターハウス5」に次のような一節がある。
「反戦小説を書いているという人間に会うと、ぼくはいつもいうんだ。何というと思う?」
「さあね。何というんだ、ハリスン・スター?」
「こういうのさ、”かわりに反氷河小説でも書いたらどうだ?”とね」
こういうユーモアは大好きだ。別に反戦のために小説を書くのはわるいことじゃないけれど、反戦のために小説を書かなくてもいい。
ヴォネガットに倣って、こんな提案を会社にしようかなと夢想する。ま、小心者の社畜である私には実行はできないけれど。
服装規定細則への「鼻毛はみ出し禁止」条項追加の提案について
1.背景・目的
- 夏季の社員の生産性を高めるために「クールビズ」の服装規定細則が緩和された。
- 現在、社内には鼻毛がはみ出している社員が散見される。会議、打合せの際に鼻毛がはみ出している社員がいると、そのことに気を取られ、集中力が散漫になり、打合せの生産性が著しく低下する。
- 打合せにおける生産性向上を目的として、服装規定細則に「鼻毛はみ出し禁止」の条項を追加することを提案する。
2.現状
- 入口ゲートにて出社時の社員100名に対して「鼻毛はみ出し」の有無をサンプル調査したところ、5mm以上の甚だしい「鼻毛はみ出し者」は5%、その他の「鼻毛はみ出し者」は25%、合計30%の「鼻毛はみ出し者」が存在した。
- 「鼻毛ははみ出し者」を含む打合せ後の社員20名にインタビュー調査をしたところ、80%は「見てはいけない、と思いつつも、ついつい鼻毛を凝視してしてしまい、打合せの内容が理解できなくなる」という旨の回答した。
- また、特に「自分より上席の社員の鼻毛がはみ出している場合に、より気になってしかたがない」との回答もあった。
3.想定される効果
(1)「鼻毛はみ出し」による生産性低下の試算結果
- 「鼻毛はみ出し」による生産性の低下は年間52,440千円に相当すると試算された。
(2)試算の前提条件
- 当社の社員の会議・打合時間を平均1日2時間、年間出勤日数を230日と想定すると延べ会議参加時間は36,800時間になる。
2時間/人・日×230日×800人=36,800時間
- 会議・打合せの平均参加人数が4人で、「鼻毛はみ出し者」の確率が30%とすると、会議・打合せに「鼻毛はみ出し者」が含まれる確率が76%である。
- このうち、「鼻毛はみ出し者」によって集中力が低下する人数は4人の参加者のうちの残りの3人である。したがって、生産性が低下する延べ時間は20,976時間となる。
36,800時間×76%×3/4=20,976時間
- 1人1時間あたりの費用を5,000円、集中力の低下が50%とすると、当社全体の「鼻毛はみ出し」による生産性の低下は年間52,440千円に相当する。
20,976時間×5,000円/時間×50%=52,440,000円
4.追加すべき条項
- 服装規定細則第3条第5項、第6項に以下の条項を追加する。
第5項 社員は出社の際には鼻毛がはみ出していないことを確認する。
第6項 業務時間内に鼻毛が鼻腔より1mm以上はみ出していることが認められた場合には、速やかにはみ出している鼻毛を除去こと。
5.実効性のある対策
- 本条項を実効性のあるものとするためには、定期的な「鼻毛検査」と「鼻毛はみ出し者」が発見された場合の速やかな除去が必要である。具体的な対策は以下の通り。
(1)鼻毛検査の実施
- 役員の出社時に秘書は「鼻毛はみ出し」の有無をチェックする。
- 社員の出社のピーク時間である8:30〜9:30の時間に入口ゲートに鼻毛風紀委員2名を配置し、5名に1名程度の割合で「鼻毛はみ出し」のサンプルチェックを行う。
- ラインマネージャーは自らの「鼻毛はみ出し」をチェックするとともに、随時部下の「鼻毛はみ出し」チェックを励行する。
(2)鼻毛除去の実施
- 各本部に鼻毛カッター、各グループに毛抜きを配布し、「鼻毛はみ出し」が発見され次第速やかに除去すること。
6.対策費用
- 対策費用は、直課経費、人件費を含め年間369千円と見積もられた。
(1)直課経費
3,131円×30本部=93,930円
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- 検査員を2人配置することを想定。
230日×2人×1時間×5,000時間/人=1,150,000円
7.スケジュール
- 「鼻毛はみ出し」の生産性への重大な影響を鑑み、経営会議における速やかな承認を得て、対策を実行すべきと思料いたします。
- 対策の実施には、経営会議の承認後1週間程度で開始できる見込み。
8.参考資料
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,伊藤典夫
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