ESL Podcastが有料化されてしまったので
ヒアリングの練習を兼ねて、通勤の時間を使って英語学習者向けの"English As A Second Langage (ESL) Podcast"を聴いていた。特に、毎週"English Cafe"というアメリカの文化紹介の番組があり、ボキャブラリー制限がありつつも非常に興味深い内容で、もはや英語の練習を超えて聴きたいから聴いている、という状態になっていた。
しかし、ESL Podcastが有料化されてしまい、お金を払ってまで聴くかなぁ、この際、学習者向けではないPodcastを聴いてみようかと思ってあれこれ探しはじめた。すると、興味深いPodcastがたくさんあるではないか!と、けっこう感動している。
映像を作る必要がないから低予算で製作できるのかもしれないけれど、よく企画が練られ、しっかりとした取材に基づき、聴き応えのあるPodcastが多い。もちろん、ネイティブ向けだから、すべてを聴き取れる訳ではないけれど、それでも十分おもしろいし、これを聴き取れるようになりたい、という気持ちが英語の学習のモティベーションにもつながっている。
私自身は聴き流しているので活用していないけれど、多くのPodcastではウェブサイトでスクリプトが提供されているので、有用だと思う。インタビュー番組だと、いろいろな英語を聴けるのもよい。キャスター、インタビューアーの英語は聴きやすいけれど、インタビュイーの英語は、なかにはほどんど聴き取れない人もいる。それはそれで練習になる。
それでは、定期的に聴いているPodcastを分野に分けて紹介していきたい。
経済学系
Freakonomics(スクリプトあり)
最初にはまったPodcastは"Freakonomics"である。これは「ヤバイ経済学」シリーズの著者の一人、スティーブン・J・ダブナーがホストをしている。たまに共著者の経済学者、スティーブン・D・レヴィットもゲスト出演することがある。
コンセプトは書籍版「ヤバイ経済学」シリーズと同様で、身近な事象を科学的に検証してみる、という内容。書籍版は、基本的にはレヴィットの研究成果が用いられているが、Podcast版はもう少し広く経済学に限らない研究成果を取材している。
比較的最近のPodcastのタイトルは"Are the Rich Really Less Generous Than the Poor?"で、金持ちになるほど世知辛くなるのか、というテーマについて心理学や経済学の研究成果に基いて迫っている。もちろん、「ヤバイ経済学」シリーズのユーモアは失われていない。
- 作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2007/04/27
- メディア: 単行本
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Planet Money(スクリプトあり)
National Public Radio (NPR)は、短い時間にまとめたPodcastのニュースも提供していて、これもヒアリングの練習によいけれど、そのほか聴き応えのあるPodcastの番組をいろいろ放送している。
このPlanet Moneyは、"Freakonomics"と比べるとアカデミック色は薄く、ドキュメンタリーより。経済系といっても、いわゆる大企業の経営、のようなものを扱っているのではなく、もっと低い視線から現場の興味深いネタを拾ってくる。
しばらく前の放送だけど、高額紙幣が廃止されたインドについて、その政策のバックボーンになった思想を提唱している人へのインタビューと、インドの庶民にとってのこの政策の現状についてリポートした"When India's Cash Disappeared"が、ほかでは知ることができないレポートをしてくれていて、おもしろかった。
インタビュー系
This American Life(スクリプトあり)
Podcastだと、いちおう目安の時間はあるけれど、ラジオやテレビの番組のようにきちんとした時間制約がないこともあって、長時間のインタビューを扱った番組がある。そのなかでも、有名人ではなく市井の人を対象としたインタビューを扱ったものも多く、この"This American Life"はそのなかの老舗らしい。
アメリカのジャーナリズムには、スタッズ・ターケルに代表されるように市井の人を対象にした厚みのあるインタビューの伝統がある。日本では、正直に言って一般人へのインタビューで興味深い本はあまりおもいつかない(村上春樹「アンダーグラウンド」ぐらいか)が、アメリカの一般人の話は、内容も語り口もおもしろく、それがアメリカのインタビューの伝統に結びついていることがよくわかる。
Death, Sex & Money
これも一般人へのインタビューを扱ったPodcast。より「生活(=死、セックス、金)」の側面について深めている。有名人も出演することがあるけれど、それらも「有名人」としてではなく、ひとりの生活者としての顔についてインタビューしている。
最近では"Two Wheelchairs and A Baby"という回が印象的だった。障害があり車椅子で生活しているカップルの子育てについての話。まさに、彼らの「生活(=死、セックス、金)」についてのインタビュー。
"The American Life"や"Death, Sex & Money"を聴いていると、アメリカっていろんな人がいて、一概にまとめることはできない、としみじみ思う。
起業系
How I Built This
まだバイオグラフィは出版されていないけれど、どうやって起業したのは聴いてみたい、という起業家へのロングインタビュー。もし、起業や新規事業に関心があるなら必聴のPodcastだと思う。
Air BnB、Zappos、Instagramみたいな今風の起業家もいるし、リチャード・ブランソンのようなすでに功成り名を遂げた起業家もいるし、私は聞いたことがないアメリカのハンバーガーチェーンの起業家もいるし、バラエティに富んでいる。
インタビュアーが、毎回、「成功したのは、運ですか、努力ですか」と質問する。ほとんどの人が、「努力はしていた、でも、タイミングについては運だった」と答えるのが印象的。
Masters of Scale
これはLinkedinの創業者のレイド・ホフマンがホストをしているPodcast。
"How I Built This"はあまり解釈をせず、創業者自身に語らせているけれど、こちらは起業家が会社規模を大きくする時に直面する問題を解決するための方法を、レイド・ホフマンが実例に基いて提示するというスタイルになっている。個人的な好みとしては "How I Built This"の方が気に入っているけれど、実際に起業をしている人にとってはこっちの方が実践的かもしれない。
この番組に登場する起業家たちも華麗である。
情報系
Global News Podcast BBC World Service
NHK BSのワールドニュースで世界の放送局のニュースを見ていると、客観性や取材の充実度などを考えるとBBCが突出して質が高いなぁと思う。
この"Global News Podcast"では、BBCの国際ニュースをまとめてくれており、世界の状況をザクッと理解するために便利である。
スポーツ系
New York Yankees Podcasts
ここ20年来ヤンキース・ファンをやっているが、シーズン中はこのPodcastでジラルディ監督の試合後のインタビューをチェックしている。今年のヤンキースは絶好調だから、毎日楽しみである。
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