世の中には嘘をつく人と嘘をつかない人という二種類の人間がいる:ドナルド・トランプ、レックス・ティラーソン、財務省

嘘をつく人(ドナルド・トランプ)、嘘をつかない人(レックス・ティラーソン)

レックス・ティラーソン国務長官トランプ大統領に解任された。

もともと考え方の差も大きかっただろうし、ティラーソン元国務長官トランプ大統領に対してあまり忠誠心あるようには見えなかった。トランプ大統領としては、北朝鮮問題で目立つ「手柄」を上げたいと考えているのだろうし、ティラーソン元国務長官はその助力をしたいとは考えていなかったのだろう。だから、このタイミングで解任したのだと思う。トランプ大統領は、スタッフを解任することになんの躊躇がない。

私が興味を感じたのは、トランプ大統領との不和の原因のひとつとなったとされるティラーソン元国務長官の記者会見だ。ティラーソン元国務長官は、トランプ大統領をプライベートな場で「間抜け」呼ばわりをしたという疑惑に対して、話をそらして否定することはしなかった。ティラーソン元国務長官は、実際に「間抜け」呼ばわりをしていたのだろう。

おそらく、トランプ大統領やその同類の人が同じ立場にあれば、躊躇なく「間抜け」呼ばわりなどしていない、と否定したに違いない。彼らは嘘をつくことに抵抗感がないし、嘘をつかないことで大統領への忠誠心を疑われるような選択をすることが賢い行為だとは思っていないだろう。

一方、ティラーソン元国務長官は、トランプ大統領との関係がより悪化することを知りながら、嘘をつかないことを選択した。

世の中には嘘をつく人と嘘をつかない人という二種類の人間がいる。

財務省はなぜ文書の改竄、書き換えをしなければならなかったのか

森友学園への国有地売却を巡る決裁文書」の改竄、書き換えについて、マスコミ、ネットではさまざまな報道、コメントが飛び交っている。それらのなかに、私の興味に応えてくれる情報、解釈がないことにフラストレーションを感じている。

私の興味は、なぜ、改竄、書き換えをしなければならないような決裁文書が書かれたのか、という問題である。改竄、書き換え前の文書には、安倍昭恵夫人や政治家の名前が並べられているが、それらの名前がなければ決裁文書として成立しないかと言えば、必ずしもそうとも言えないようにも見える。もし、流出すれば危険そうに見える文書が、私的なメモではなく、わざわざ決裁文書として起案され、承認を得たのだろうか。

以下は、私個人のまったくの想像である。

森友学園への国有地売却について、財務省内部で特別な説明を要する特殊異例な配慮があった、ということなのだろう。この売却の決裁を財務省内部で通すためには、さまざまな政治家が関与したという経緯を示す必要があった。そして、そのときは、この文書が外部に流出することはまったく想定していなかった。

森友学園への国有地売却が国会で取り上げられ、問題視されるようになると、この文書の存在がいかにも危険なものになる。佐川元理財局長の国会での答弁とも矛盾をきたす。その結果、佐川元理財局長の国会での答弁に合致させるような形に改竄、書き換えをしたということなのだろう。

国有財産売却に関して、この種の特殊異例なケースというのはどのくらいあるのだろうか?たまたま森友学園は注目を集めたが、これが唯一の事例とは思えない。そうであれば、注目を集めていないけれども極めて危険な国有財産売却に関する決裁文書が他にもあるのではないだろうか。もしかしたら、問題化する前に組織的に改竄、書き換えがなされているかもしれない。

なぜ嘘をつかない人は嘘をつかないのか

トランプ大統領は、その時ごとに自分の都合のよい発言をする。発言の一貫性や真実性は気にしないから、公然と嘘をつくことも多い。そのことに倫理的な罪悪感を感じている様子はまるでないし、むしろ賢い行為をしているとすら思っているかもしれない。この種の嘘をつく人はたまに見かけることがある。

 一方、ティラーソン元国務長官は、嘘をつかないという倫理観を持っているため、その記者会見では明らかに不自然な振る舞いになってしまったし、不自由に見える。その点、トランプ大統領は自由に言いたいことを言っている。

私は、個人的にはティラーソン元国務長官の不自由さはよくわかる。私の場合、相手が誰であっても同じことを言う、という個人的な倫理観、というか、嗜好がある。だから、陰口は好きではない。もちろん、誰か他人のネガティブなことを言いたくなることはあるので、そのときは、まず、本人に対して直接ネガティブなことを言って、ようやく安心して別の人にその人に関するネガティブなことを言うことができるようになる。これをきちんと貫徹するのはけっこう面倒だし、社会生活、職業生活上の不都合も多い。だから、このように振る舞うことはまったくお勧めしない。

考えてみれば、嘘をつかないという倫理を貫徹するのも、けっこう面倒で、社会生活、職業生活上の不都合も多いだろう。実際、トランプ大統領のような人の元でティラーソン元国務長官が働く上で、大きな不都合が生じた。

なぜ嘘をつかない人は、そのような不都合にもかかわらず、嘘をつかないのだろうか、急に不思議になってきた。