戦国時代

兄のノンフィクションの第二作目、高木徹「大仏破壊−バーミアン遺跡はなぜ破壊されたのか−」(文藝春秋)(ISBN:4163666001)を読んだ。
直接関係した人たちへの豊富なインタビューに支えられて、タリバンの実態についてよくわかる。情報に厚みがある。タリバンタリバンとして扱うのではなく、タリバンに係わった人たちひとりひとりの固有名詞が示され、それぞれの個性と考え、具体的な行動が描かれているため説得力がある。タリバンについてのステレオタイプが覆される。
「大仏破壊」と平行して、北方謙三版の「三国志」(ハルキ文庫)を読み進めているが、アフガニスタンの話がそのまま「三国志」のようであることに驚く。
タリバンは、オマルを中心としてわずか数名で旗揚げをしたという。治安を回復することを旗印に、またたく間に兵が集まってきてアフガニスタンのかなりの部分を支配下に収めるところなど、劉備曹操を混ぜたようなストーリーのようである。そして、タリバンに対抗し、その他の武将たちが北部連合を作って対抗するところもさながら三国志だ。オマルに取り込んで国を乗っ取るオサマ・ビンラディンは、さしずめ司馬仲達か。
北朝鮮の報道を見ていると、きわめて表層的で断片的な報道しかなされていない。しかし、北朝鮮においても、それぞれ固有名詞をもった人たちがさまざまなことを考えて動いているはずだ。日本であれば、北朝鮮へさまざまなコネクションもあるはずである。事実の厚みのある取材ができないのだろうかと思う。