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「建国記念の日」にふさわしい日はいつか

雑感 時候

建国記念の日 悠久の歴史に思い馳せよ」という産経新聞の社説(http://goo.gl/Sxou7c)を読み、あいかわらず産経新聞の主張は「右翼」の観点からみても浅いと思った。
このblogで再三繰り返しているように、私は佐幕派であり共和主義者だから産経新聞のような薩長藩閥的国家主義とはあいいれない。考えを異にしていても尊敬できる論者もいるが、この産経新聞の主張は「右翼」としてみてもきわめて不徹底なものである。まっとうな右翼の人は産経新聞的な浅い主張に納得できないのではないかと想像している。
上記の社説にはこのように書かれている。

 紀元節の制定は、国の起源や一系の天皇を中心に継承されてきた悠久の歴史に思いを馳(は)せるとともに、日本のすばらしさを再認識することで、国民が一丸となって危機に対処する意味があった。

建国記念の日紀元節を引き継いでいる。紀元節は明治初年に日本書紀に書かれた神武天皇の即位の日を根拠にして制定されている。日本書紀神武天皇の即位の日は「正月朔日」と書かれている。当然ながら、これは太陽暦ではない。換算作業が行われ、太陽暦の2月11日が紀元節とされた。
少しでも真剣に日本の歴史に関心がある人が、この日を「悠久の歴史に思いを馳せる」のにふさわしい日と考えることができるだろうか。特に、日本の歴史、伝統に関心が深く、尊重しているはずの「右翼」の人にとって。
いくら原理主義的な「右翼」の人でも、神武天皇が実在の人物であり、日本書紀の記述が歴史的事実だと考える人は少ないと思う。日本書紀神武天皇の即位の日が「正月朔日」となっているのは、歴史的事実の反映ではなく単に区切りのよい日が選ばれたということは明らかである。神武天皇の時代の暦の「正月朔日」が、新暦の2月11日に換算された作業もあいまいさが残る。このような根拠で選ばれた日を特別な日だろうか。
私は「右翼」ではないけれど、仮に「右翼」だとしたら、以下の二つの日を「悠久の歴史に思いを馳せる」のにふさわしい日として提案すると思う。
神武天皇が神話的存在だからその即位の日を「建国記念の日」とすることに反対しているのではない。仮に、この日を祝うことに重みのある伝統があれば「建国記念の日」としてふさわしいだろう。しかし、そのような伝統はない。
もし、天皇の即位を記念して「建国記念の日」とするならば、新嘗祭の日、現代では勤労感謝の日の11月23日、をそれにあてるのがふさわしい。天皇の即位の儀礼は、新嘗祭の日に、即位の礼大嘗祭が行われるのが伝統であり、例年の新嘗祭天皇の祭祀でもっとも重要なもののひとつである。もし、私が「右翼」であれば、天皇新嘗祭をするときに「悠久の歴史に思いを馳せる」に違いない。
「国民が一丸となって危機に対処」することを中心に考えるならば、明治国家の成立を記念して王政復古の日を「建国記念の日」とすればよいだろう。天皇や日本という国号には長い歴史があるけれど、国民が参加する国民国家としての起源という意味ではこの日がふさわしい。佐幕派の私としてはこの日は「敗戦記念日」なのだけれども。
本居宣長を読んでいると「古事記」や「源氏物語」を深く尊重している気持ちはよく伝わってくるし、新鮮な指摘も多く、論理性もある。そこまでさかのぼらないとしても、福田恆存江藤淳の主張には首肯させられるところは多い。しかし、最近の「右翼」の論者にそこまでの深みを感じることはほとんどない。
また、「右翼」なのにこの人は本当に天皇を崇敬しているのか、と疑問に感じることも多い。例えば、今の天皇は明確な意図があって靖国神社に参拝していないが、もし、天皇を崇敬しているのであれば仮に自分と天皇の考えが違っていても靖国神社に参拝することを遠慮するのが当然ではないだろうか。また、皇太子が「僕が一生、全力でお守りしますから」といって選んだ雅子妃を、天皇を崇敬している人ならば「全力でお守りする」のが当然ではないだろうか。
産経新聞は次のように書いている。

日本や日本人をどこまでもおとしめ、国民を日本嫌いに仕向けるがごとき言動を繰り返す政治家やメディアが少なくない。学校教育でも戦後は、神話に基づく建国の歴史が排除され、若い世代の祖国愛の芽が摘まれてきた。

たしかに「自虐史観」には問題があると思うが、一方で産経新聞が提示するような底の浅い「右翼」的な主張には同意できない。学校教育に「神話に基づく建国の歴史」を取り入れれば「若い世代の祖国愛の芽」が育つと真剣に考えているのだろうか。
多様な意見を持った人がいるということは社会として健全な状態である。だから、佐幕派、共和主義者の私も、私と考えが違う人がいて当然であり、尊敬できる右翼の論者がいることはよいことだと思う。浅い「右翼」ではなく、まっとうな右翼の人に登場してほしいと心の底から思う。