WBC

日曜日と今日とようやくWBCのゲームをリアルタイムで見ることができた。
以前は、野球の国別対抗戦には懐疑的だったけれど、アテネ・オリンピックを見て以来、考えを改めた(id:yagian:20040822)。WBCも、いろいろと問題はあるにせよ、けっこう期待をしていた。
実際に試合を見たのが、日本対韓国、日本対キューバで、MLBのトップクラスの選手をあまり見ることができなかったのが残念だったけれど、オリンピックと同様に、出場した選手はいつもに増して気合いが入っている様子を見るのは楽しい。
今日の試合でも、9回表、日本が攻撃している間、ベンチに座っていた大塚は、いつになくかたい表情で、水を口に含みながら、水をかむような仕草を繰り返していた。そうとう緊張していたのだろう。
決勝戦が日本対キューバになったのは、番狂わせだろう。日本側から見れば、ドミニカやベネズエラが出てこなかったのは幸運だったし、キューバにしてみれば、ほんとうは、アメリカと対決したかっただろう。
今回のWBCは番狂わせが起きる要素が多かった。野球では、投手のローテーションが大きな影響を与える。本命のチームに対して、相手チームはエースのピッチャーを当ててくる可能性が高いから、簡単には勝てない。しかも、シーズン前だから選手のコンディションにもばらつきがある。二次リーグでの日本対韓国戦では、韓国の先発ピッチャーの朴賛浩に抑えられてしまったけれど、準決勝、決勝と相手チームの先発ピッチャーには恵まれたように思う。
しかし、WBCは、レギュラーシーズンのリーグ戦とはちがって、一種のイベント、お祭りでもあるから、最高のチームを決定するというより、番狂わせがおきるゲーム性の高さも、おもしろみを高めているといえるかもしれない。
今回の結果で、次回のWBCでは、アメリカがより本腰を入れてもらえれば、大会が充実するだろう。しかし、アメリカでも勝てるとは限らないということが明らかになってしまったから、もしかして、次回のWBCが開催されなかったりして。
こういった大会は、普段、あまり見ない選手ををまとめて見ることができることも楽しい。
日本は、松坂、上原、渡辺の三人の先発ピッチャーの力がそろっていて、安定していた。アテネ・オリンピックのときもそうだったけれど、上原は、国際試合でみると、やけにいいピッチャーに見える。初球からフォークボールで簡単にストライクが取れるコントロールがあれば、簡単に打たれることはないだろうと思う。日本では打たれてしまうことが多いのは、ピッチングを覚えられてしまっているからだろうか。メジャーリーグに行った方が、初対決のバッターが多くて、むしろ通用するのではないか。
里崎は、バッティングはいいのかもしれないが、キャッチングが危なっかしくて気になった。日本代表のレギュラーのキャッチャーとしては、どうなのだろうか。
金炳賢は、2001年、ダイヤモンドバックスがワールド・チャンピオンになったとき、クローザーをしていた。この時のワールド・シリーズでは、ヤンキースが、ランディ・ジョンソンカート・シリングの二人にやられてしまったのだが、金炳賢は打ち込んでいた記憶がある。日本対韓国戦で彼がでてきたとき、これは打てそうだという予感がした。
そして、今回の大会で目立っていたのは、なんといってもイチローだった。年末に、古畑任三郎のドラマに出演したり、今回は、日本代表チームに力を入れたり、そろそろ、日本に帰る準備を始めたのだろうか、という気すらする方向転換ぶりである。意地の悪い見方をすれば、イチローは誰かの風下に立つのがあまり好きではなく、そういう意味では、松井のいない現在の日本代表であれば、イチローを中心としたチームになるから、居心地がよいように見える。マリナーズも、ワールドチャンピオンをねらえるチームではないけれど、やはり、イチローが中心のチームであり、その意味では居心地がよいのだろう。より高い目標を目指すのであれば、マリナーズを出て、ワールドチャンピオンを狙えるチームに移籍すればいいのではないかと思うけれど、そういったチームはイチローにとっては必ずしも居心地がよいわけではないかもしれない。
それにしても、シーズン前の大事な時期、ソフトバンク・ホークスは、監督不在で問題ないのだろうか。
プロスポーツの大会を組織するには、参加する選手が全力を出すような動機を与えるために、権威を高めることが重要である。WBCでは、メジャーリーグの選手に辞退があり、改善の余地はあるのだろう。日本の選手たちを見ていると、ある意味、日本シリーズよりも真剣に取り組んでいるように見える。その意味では、日本シリーズももう少し権威づけをすることが必要なのではないだろうか。
WBCは、レギュラーシーズンに対しては、オールスターゲームという性格がある。だから、シーズン中盤、オールスターゲームの代わりに開催すればよいのではないか。そうすれば、選手のコンディションには問題がなくなる。シーズン中だと、会期は限られるから、サッカーのワールドカップのように、各地域の予選は、シーズン前に開催して、地域の代表チームはあらかじめ決めておき、本戦は8チームのトーナメントにすればいいだろう。
松井秀喜は、ヤンキースでワールドチャンピオンを目指すことを優先した。それはそれで理解できる考え方である。WBCが定着するには、ワールドチャンピオンを目指すことと両立できるようなシステムにする必要があるだろう。
WBCだけではなく、日本シリーズプレーオフも改善の余地があるのも間違いない。今のパリーグプレーオフは、おもしろく、盛り上がっていてよいけれど、やはり、変則な方法になっているのが気になる。この際、プレーオフ日本シリーズは、日本の3チームに韓国のナンバーワンチームの4チームでのトーナメントのアジアシリーズに再編すればいいのではないだろうか。
日本からプレーオフに進出する3チームを決めるには、今の12チームを3地区に再編して3つの地区優勝チームを決めるか、セリーグパリーグの優勝チームに加え、最高勝率の二位のチームをワイルドカードとすれば、不自然なプレーオフは不要になる。
今回のWBCでの日本対韓国戦の盛り上がりを見ると、韓国の優勝チームがフランチャイズで日本チームを迎えた試合は、さぞかし盛り上がると思う。日本のプロ野球だけではなく、韓国のプロ野球にもメリットがある。