いまさらながら

アメリカ大統領選挙の前後、もし、自分がアメリカに住んでいて選挙権があったとしたら、ブッシュとケリーのどちらに投票しただろうかと想像していた。
おそらく、ずいぶん迷ったあげくに、ブッシュに投票し、上院議員選挙は民主党の候補に投票したのではないかと思う。
9.11は、たまたまブッシュ大統領の就任後に起きたけれど、クリントン政権の時期に起きてもおかしくなかった。クリントン政権時代の安全保障政策のつけがブッシュ政権時代にまわってきたといってよいと思う。
ボブ・ウッドワード「ブッシュの戦争」(日本経済新聞社)(ISBN:4532164370)を読む限り、十分な準備がなかった状態で9.11の事件が発生したにもかかわらず、そのあとのアフガニスタンの戦争までの対応は、すばやく見事だったと思う。ブッシュ大統領は、有能なスタッフをバランスをとりながら上手く使っている。ほかの大統領だったとしたら、これだけ水際だった対応ができたかどうかわからない。
しかし、ボブ・ウッドワード「攻撃計画(Plan of Attack)―ブッシュのイラク戦争」(日本経済新聞社)(ISBN:4532164737)を読むと、ブッシュ大統領ラムズフェルド国務長官は、9.11と無関係にもともとイラクと戦争することを決めており、たまたまこの機会を捉えて開戦した、ということがわかる。
大統領選挙中、たしか、ブッシュは、イラク大量破壊兵器がなかったとしてもサダム・フセインがいない方がよりよい世界になった、との意味のことを言っていたと思う。これは、ブッシュの本音に近いのではないか。結局、イラク戦争は、いろいろな理由をつけているけれど、サダム・フセインを追い出すことが目的だったということになるのだろう。
私がアメリカに住んでいたら、9.11からアフガニスタンの戦争までの対応は支持し、イラクの戦争には反対するだろう。
それでは、イラク戦争を理由にケリーに投票するだろうか。そうはならないと思う。
ケリーはイラク戦争の開戦時に賛成の投票をしている。
そして、いったんイラクとの戦争をはじめてしまった以上、戦争自体の是非とは別に、うまく決着をつけなければならない。そのためには、イラクの治安を回復して選挙を成功させることしかない。ケリーが大統領になったとしても、ブッシュよりうまくイラク戦争を終結に導くことができるとは思えないのである。
エスタブリッシュメントの出身でエリートだった父を持ち、父親に比べてできの悪い息子として育ち、あてがわれた会社もつぶし、いったんはアルコールにおぼれた男が、信仰によって立ち直り、大統領に当選した後には9.11という試練に直面し、それをなんとか切り抜け、父親がなしえなかった二期目の大統領に選出され、父親を乗り越えた、というストーリーには、素直に共感する。
しかし、非キリスト教徒としてアメリカに暮らすとしたら、文化、宗教の多様性は認められないと困るだろうと思う。そこで、立法府については民主党支持ということになる。