アメリカの本音と建前

アメリカの中間選挙の大勢が判明した。 (http://projects.usatoday.com/news/politics/2010/elections/)
世論調査などで予想されていた通り、下院は共和党が過半数を占め、上院は僅差で民主党が過半数を守る見込みである。
2年前、オバマ大統領が当選し、熱狂的に受け入れられていたことを考えれば、政治的風景がまったく変わってしまっている。たった2年間でどうしてこれだけ変わってしまったのだろうか。
オバマ大統領のこの2年間の主な業績を見ると、前の政権からの懸案だったイラクからの撤退をなんとか無事にやり遂げて、リーマンショックへの緊急的な経済対策を実施して、最悪の事態はなんとか回避した。しかし、景気は本格的に回復せず、失業率は高止まりしている。賛否両論わかれている健康保険の法案はなんとか通すことができた。核縮減の宣言を行ない、ノーベル平和賞を受賞した。
外国から見てみると、それほど悪い成績ではないように思える。この不景気も、原因はもともとオバマ大統領時代のものではないし、回復までには時間がかかるだろう。景気回復の遅れという結果と大きな政府という方針が批判されているが、この時点で財政支出を緊縮の方向に切り替えれば、景気回復がさらに遅れるように思う。オバマ大統領への批判は、客観的に見れば、筋が通っていない。
「かんべえの不規則発言」 (http://tameike.net/) にオバマ大統領について次のように書かれている。

○あらためてオバマさんの人生を振り返ってみれば、彼はハワイで育った呑気な若者であり、それが本土に渡ってアイビーリーグの大学で純粋培養され、社会経験と言えばコミュニティ・オルガナイザーとシカゴ大学の講師と、イリノイ州の州会議員であった。おそらく彼は、「アメリカのハートランド」を体感できていない。選挙戦では南部や中西部を回っただろうけれども、普通のアメリカ人のことが分からないのだと思う。

○日本人に置き換えてみれば、「演歌は嫌いです、日本酒も飲みません、相撲も笑点サザエさんも見たことないです」というタイプでしょうか。そういう人が、会社のトップに立つことになったら、それはいろいろと弊害があるでしょう。少なくとも、そういう個性は隠しておいた方がいい。その上でときどきは、労働組合の委員長と日本酒を酌み交わしたり、取引先とカラオケに行ったりした方がいいでしょう。そうでないと、「あの人はエリートで、下々の気持ちが分からない人」ということになって、結果的に短命に終わってしまうのではないか。

○アメリカにも日本と同様に「反知性主義」の伝統がありますから、こういう点は上手にごまかさないとマズイと思います。

確かに、そういうところはあるかもしれない。黒人大統領が誕生したということは、アメリカの歴史の上で画期的なことで、建前としてそのことに反対することは難しい。オバマ大統領が当選したときには、その建前が表に出て高い支持率を得たのではないか。
しかし、本音では黒人大統領を支持したくないという人たちがおり、景気回復の遅れや大きな政府という口実を通じてオバマ大統領を批判しているのではないか。ティー・パーティー・ムーブメントに代表されるアメリカの「反知性主義」はその表れなのだろう。
そういう「反知性主義」を代表するのが、エリートの家に生まれたが、コネで一流大学に入ったものの成績はすぐれず、ビジネスでは成功できず、アルコール中毒になり、しかし、気やすい人柄で、キリスト教アルコール中毒を克服したというブッシュ・ジュニアということなのだろう。そして、今は、サラ・ペイリンがその座を占めている。しかし、サラ・ペイリン?本当に彼女でいいのか、アメリカ国民よ。
そして、大統領選挙オバマを熱狂的に支持した若年層が、オバマ大統領に失望して、今回の中間選挙では投票率が下がっているという報道がある。これはちょっと理由がよくわからないところがある。彼らはオバマ大統領に何を期待し、何が裏切られたのだろうか。
抽象的な「変革」というスローガンに、それぞれの人がさまざまな期待を投影してしまい、自分の期待が叶えられなかったことに勝手に失望しているのだろうか。