ごちゃごちゃ感覚

最近、箭内道彦「サラリーマン合気道」を読んだ。なかなか刺激的な本でだった。
もともと自己啓発系、ライフハック系の本はあまり興味がなかったのだけれども、心が弱っていたとき(うつ病で会社を長期休暇していた)に、スティーブン・コビー「7つの習慣」を読んでずいぶん励まされたこともあり、敬遠することもないかと思うようになった。
けれども、実際に自己啓発系、ライフハック系の本を手に取ると、なかなか「啓発」される本はない。功利主義的というか、目的、目標を達成するための最短コースを指し示すという内容が多くて、心に響いてこない。簡単に言うと、そんな生き方したいわけじゃない、と思ってしまう本が大部分である。
「サラリーマン合気道」は、社会人になって、それなりに仕事のお作法は身につけたけれど、しかし、内心もやもやしている状況をいかに突破してきたかということについて書いている。自分もそういったもやもやした状況で悩んでいた(いる)し、自分なりの方法で突破したり、また壁にぶつかったりという繰り返しをしている。そんなときにヒントとなるようなことが書かれていると思う。
さて、今日は「サラリーマン合気道」が本題ではなく(これはこれでそのうち書こうと思う)、箭内道彦の作品を今日の話の前フリにしようと思っていたのだった。彼の作品で私が気に入っているものをランダムに列挙すると、

という感じ。
企業として伝えたいメッセージが、企業のひとりよがりではなくて、普遍的なメッセージとなって押し付けがましくないけれど、確実に伝わってきて、いい広告だなと思い、私とはまったく畑違いの人であるけれども尊敬している。
箭内道彦のように洗練された表現をする人ももちろんいるのだけれども、最近は、あえて(あえてなのかわからないことも多いけれど)洗練させず「ごちゃごちゃ感覚」を打ち出した表現が目について、疲れてしまうことがある。
日本のファッションについて英語版ウェブログに書いた("The Grammar of Fashion" http://goo.gl/8R1i6)とき、きゃりーぱみゅぱみゅの英語のインタビュー記事があったのでリンクを貼った。そのついでに、彼女のビデオとウェブログ(http://goo.gl/r0oMB)を眺めてみたのだけれども、意図的な「ごちゃごちゃ感覚」に少々疲れてしまった。

洗練された文化に対比する形であえて「ごちゃごちゃ感覚」を打ち出すおもしろさは理解できるのだけれども、私の目から見るといまの日本ではもう十分ありあまるほどの「ごちゃごちゃ感覚」があって、箭内道彦のようなすっきりしたメッセージのほうが届いてくるような気がしている(中田ヤスタカの楽曲そのものは洗練されているけれど)。
英語版ウェブログ(http://goo.gl/J3DhM)はblogspotで作っているけれど、あまり凝らずに用意されたテンプレートを使うと、すっきりとしたデザインになる。英語のウェブログを読んでいると、WordPress.comを使っている人も多く、ここもシンプルなデザインになる。Hatenaも日本のウェブログのサービスのなかではすっきりしていて気に入っている。
自分の交友はかなり偏っているからあたかもHatenaがメジャーなウェブログのサービスのような気がしてしまうけれど、ごくごく一般の人にはHatenaはほとんど知られていないし、Amebaの方がはるかにメジャーである(普通の人にウェブログをやっているという話をするとき、Hatenaでやってるんだというと、ほぼ確実に怪訝な顔をされる)。
Amebaの有名人のウェブログを見ると「ごちゃごちゃ感覚」が満載で、どこを読んでよいのやらと呆然としてしまう。教科書的なデザインの本に書かれたルールはまるで無視しているようにも思うのだが、結果としてAmebaの方がメジャーになっている以上、ごく普通の人たちにはこういったデザインの方がしっくりくるということなのだろうか。
同じような意味で苦手なのは、ドン・キホーテマツモトキヨシ、そして楽天である。このうなぎの蒲焼を売っているサイト(http://goo.gl/RWvrv)は、私の楽天に対して持っているステレオタイプそのものという感じなのだけれども、こういうデザインのサイトが溢れているところを見ると、少なくとも楽天ではこういうサイトの方が売上がいいということなのだろうし、確信犯でやっているのだろう。私は、ドン・キホーテマツモトキヨシではうまく買物ができないし、amazonのように同じフォーマットで情報が整理されていた方が買物がしやすいけれど、こういった「ごちゃごちゃ」した店を利用する人は、私と求めているものが違うのだろうけれど。
しかし、日本って昔から「ごちゃごちゃ感覚」の国だったのだろうか、と疑問を感じている。例えば、東京オリンピックのポスター(http://goo.gl/UyQh0)は大好き(こういうのカッコよくないですか?)だけれども、今はこういった洗練されたデザインは企画会議を通らないのだろうなと思う。
きゃりーぱみゅぱみゅを見ていると、この「ごちゃごちゃ感覚」と「カワイイ」という感覚と深く結びついているように思う。現代の日本のポップカルチャーを支配している「カワイイ」と「萌え」(""Kawaii" and "Cool", "Moe" and "Sexy"; Japanese and American Pop Culture" http://goo.gl/iNEI0)と「ごちゃごちゃ感覚」の発祥、普及は関連しているように思う。
東京オリンピックの時はまだ生まれていなかったけれど、私の幼少の頃はまだ「カワイイ」や「ごちゃごちゃ感覚」はあまり一般化していなかったように思う(もちろん「萌え」はもっと後になって普及した感覚)。
いつからこうなったのだろうか。ちょっと探求してみたくなっている。おそらく、もともと、ある時期に洗練を目指すハイカルチャーへのアンチテーゼとして提示され、それがいつのまにかメインストリームになっていたという経緯をたどっているのだと思うけれど、いずれ具体的な事例を通じて検証してみたい。

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