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日本軍の失敗と日本の失敗

「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」を久しぶりに読み返してみた。
ほとんど内容を忘れていたが、思ったより読みやすい本だった。よみやすい分、逆に言えば、ケーススタディは浅く、分析も図式的という印象も受けた。しかし、この本で指摘されている日本軍の欠陥は、おそらく誰もが身近な組織に共通する点に思い当たるだろう。
私の勤めている会社も含め、多くの日本の企業、官公庁に共通する欠点は、成員の多様性の低さ、多様性を統合するマネジメント能力の低さ、それに起因する創造性の低さ、変化が激しく多様性が高い環境への適応性の低さ、にあると思っている。「失敗の本質」では、まさにその点が指摘されている。

 組織が継続的に環境に適応していくためには、組織は主体的にその戦略・組織を環境の変化に適合するように変化させなければならない。このようなことができる、つまり主体的に進化する能力のある組織が自己革新組織である。…

 適応力のある組織は、環境を利用してたえず組織内に変異、緊張、危機感を発生させている。あるいはこの原則を、組織は進化するためには、それ自体をたえず不均衡状態にしておかなければならない、といってもよいだろう。…
 均衡状態からずれた組織では、組織の構成要素間の相互作用が活発になり、組織のなかに多様性が生み出される。組織のなかの構成要素間の相互作用が活発になり、多様性が創造されていけば、組織内に時間的・空間的に均衡状態に対するチェックや疑問や破壊が自然発生的に起こり、進化のダイナミックスが始まるのである。

 およそイノベーション(革新)は、異質なヒト、情報、偶然を取り込むところに始まる。官僚制とは、あらゆる異端・偶然の要素を徹底的に排除した組織構造である。日本軍は異端者を嫌った。…およそ日本軍の組織は、組織内の構成要素間の交流や異質な情報・知識の混入が少ない組織でもあった。…

 組織は進化するためには、新しい情報を知識に組織化しなければならない。つまり、進化する組織は学習する組織でなければならないのである。組織は環境との相互作用を通じて、生存に必要な知識を選択淘汰し、それらを蓄積する。

 最後に、自己革新組織はその構成要素に方向性を与え、その協働をかくほするために統合的な価値あるいはビジョンを持たなければならない。自己革新組織は、組織内の構成要素の自律性を高めるとともに、それらの構成単位がバラバラになることなく総合力を発揮するために、全体組織がいかなる方向に進むべきかを全員に理解させなければならない。組織成員の間で基本的な価値が共有され信頼関係が確立されている場合には、見解の差異やコンフリクトがあってもそれらを肯定的に受容し、学習や自己否定を通してより高いレベルでの統合が可能になる。ところが、日本軍は、陸・海軍の対立に典型的に見られたように、統合的価値の共有に失敗した。 
(pp374-392)

以前、テレビである大企業の幹部の会議を見た時に、大きな会議室に同じようなダークグレーの地味なスーツを着た東洋系の中年男性だけが集合している様子を見て、こんなに多様性が低い組織で大丈夫なのだろうかと不安に思った。
震災から福島第一原子力発電所の事故を通じて、電力会社、政府、議会はまさに自己革新をしなければならない機会であるけれども、多様性の低さが大きなネックになっているように見える。
私の所属している会社も多様性は低く、役員は中高年の日本人男性しかいない。落胆したことに、今年の新卒採用では「協調性」を重視するという方針が示された。私は、必要なときに必要な人材を採用すればよく、そもそも新卒採用自体不要だと思う。新卒一括採用は人事部の都合にすぎない。仮に、新卒採用を継続するとしても、「エッジの立った」そして「多様」な人材を採用しなくてどうするのだろうか。
奇橋であっても能力の高い人材を束ねてチームとして機能させることがマネジメントの仕事だと思う。「協調性」のある人材を採用させなければならないのがこの会社の現状であれば、マネージャークラスの再教育、能力のあるマネージャーの中途採用こそが最優先事項ではないか。
最後に、ソ連軍のノモンハン事件における日本軍の評価について引用した。極めて象徴的である。

 なお日本軍を圧倒したソ連第一集団軍司令官ジューコフスターリンの問に対して、日本軍の下士官兵は頑強で勇敢であり、青年将校は狂信的な頑強さで戦うが、高級将校は無能である、と評価していた。
(p68)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)