京都の居心地の良いところ

歴史の地層

先週末、つれあいの出張のご相伴で京都に行ってきた。

奈良の寺院に行くと、鎌倉時代や江戸時代に作られた建築物、仏像も多いけれど、古代の雰囲気にひたることができる。ただし、それ以降の歴史を感じることはできない。一方、東京ではどれだけ遡っても江戸時代後期より古い文物はほとんどない。

京都は古代から中世、近世、近代までの文物がそろっていて、京都の地を舞台に展開してきた歴史が地層にのように積み重なり、その断面を見ることができる。

現代の京都の中核は、中世から近世にかけての時代に形成されたと思う。多くの古代の仏像が残されている奈良の寺院に比べると、中世に伝来した禅宗と庭園が京都の寺院の特徴だ。しかし、古代から伝わる寺社仏閣もあるし、また、江戸時代、幕末を経て近代の建築物も多い。

そんな京都の歴史の地層のなかから、私が居心地がいいと思うところについて書いてみようと思う。

東寺

新幹線で東京から京都に行く時、大津を過ぎてトンネルを抜けるとそろそろ網棚から荷物を降ろし始める頃、左手に東寺の五重塔が見える。毎回、京都についたんだなぁと実感する。

奈良薬師寺の東塔も有名だけれども、私はこの東寺の五重塔はバランスが良く、すっきりとしていて、いちばん美しいと思う。新幹線からみる遠景もいいし、近景で見上げた姿もいい。

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#东寺是我最喜欢的寺院。它常常让我很平静。#京都

東寺は京都ではいちばん立派な仏像がある。講堂の立体曼荼羅は圧巻で圧倒される。口をぽかんと開けてしばし見とれてしまう。最近は、隣の金堂の薬師如来様も気に入っている。講堂は広い空間を埋め尽くすように仏像が置かれているが、金堂の薬師如来様もかなり大きい仏像だけれども、広い空間にゆったりと置かれている。正面に座ってその姿を見上げていると心が落ち着いてくる。

糺ノ森と鴨川合流点

最近、旅先で時間があればジョギングをするのを楽しみにしている。

今回の旅行では、四条烏丸の宿から京都御所を経て、糺ノ森、下鴨神社に行き、鴨川の合流点まで戻って鴨川の河原を四条大橋まで下った。

糺ノ森のあたりもなんだか居心地がいい土地だ。俗な言葉で言えば「風水が良い」感じがする。今回は紅葉の時期も過ぎ、落葉樹の葉は落ちていたけれど、そんなちょっと寒々とした雰囲気も心地よい。いつもアスファルトの上を走っているけれど、やはり落ち葉に覆われた土の上を走るほうがずっと快適である。

漱石が大学を辞めたあと、長期の京都旅行をしたことがある。そのとき、京都帝国大学文科大学長だった狩野享吉の家に泊まったという。その家が、糺ノ森の近くにある。脱俗した狩野亨吉の気質と糺ノ森は似つかわしいように思う。 

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冬の糺ノ森

古代の京都

京都の歴史の地層が興味深いと書いておきながら、ふたつとも古代の京都を選んでしまった。居心地のよい、という観点では古代の土地がよいのかもしれない。