入院
整形外科の外来での診察が終わった後、そのまま入院することになった。つれあいに車いすを押してもらい、採血と胸のレントゲン写真を撮り、入院窓口で手続きを済ませて病棟に行った。決まり事らしいけれど、まず、体重測定のために体重計に乗るように言われた。その頃には朝飲んだ痛み止めの効き目が薄れてきていたから、立ち上がるのがつらい。そんな形式的にやらなくても、とも思いつつ、何とか体重計をはかった。担当の看護師さんから問診があり、ひととおり注意事項を聞いて、病室に入った。
六人部屋のいちばん奥の窓際のベッドだった。車いすからベッドに移って横になり、まずは、ほっとした。家から何冊か本を持ってきていたけれど、読み切ってしまいそうだったから、つれあいに文藝春秋を買ってきてもらった。文藝春秋は、活字がぎっしりと詰まっていて、一文字あたりの値段が安く、こんなときにはちょうどいい。もう、昼食の時間は終わっていたから、文藝春秋のついでに買ってきてもらったパンとプリンを食べる。病床でプリンを食べると、なんだか病人気分が高まる。
病室では携帯を使えないのかと思っていたが、通話はできないけれど、メールは大丈夫だった。急に休むことになったので、会社やお客さんに携帯でメールをせっせと打つ。パソコンは打てそうもないから持ってこなかったけれど、携帯だったらどんなかっこうでも打てる。バリアフリーという意味では、携帯はずいぶん役に立っているのかもしれない。
しばらくすると、点滴をされることになる。入院もはじめて、点滴もはじめてで、いちいち興味津々である。腕の表側、というか、手の甲の上に針を刺され、点滴がつながれる。ちょっと清涼感がある液体が血管のなかに入ってくるのを感じる。点滴がおわるのを待ちながら、仰向けになって文藝春秋を読む。膝を曲げて立てれば、仰向けでもあまり腰に負担は感じない。点滴が落ちきったので、ナースコールを押して、点滴を外しに来てもらう。明日の点滴に備えて、針とそこに着いている管は抜かず、包帯で腕に固定する。管が着いた身体になったな、と考えていた。
夕食の時間になる。ちょうど、痛み止めの薬が切れて、起きあがれなくなっていた。トレイをベッドの上に置いてもらって、横になったまま食べる。肉野菜炒めがでたのだけれども、何気ない味で予想以上においしかったし、量もたっぷりだった。それまで、トイレに行くのがつらいので、あまり飲み食いしないようにしていたけれど、食後の鎮痛剤が効き出したところでナースコールを押してトイレに行こうと思った。処方された薬は、鎮痛剤に加えて、胃が荒れるのを防ぐために、胃薬もあわせて飲む。いかにも西洋医学風の処方だなと思う。
鎮痛剤が効き始めるのを待って、ナースコールを押す。自宅に比べると、車いすでトイレに行けるし、手すりもついている。入院して良かったと思った。