勝負あり
松坂大輔の年俸交渉が難航しているという報道があるが、代理人としてのスコット・ボラスにとって、期限ぎりぎりまで交渉するのは、クライアントである松坂大輔に対する当然の責務だろう。
スコット・ボラスは、ポスティングシステムに批判的だというが、たしかに彼に理があるように思う。そもそも、レッドソックスと松坂大輔の交渉は、レッドソックスに有利で、松坂側は不利な立場に立たされている。フリーエージェントであれば、いくつかの球団からのオファーを比較することができるが、ポスティングシステムではひとつの球団に絞られ、比較することは難しい。そして、松坂がMLBに入ることに積極的であることが明らかである。その上、レッドソックスが、交渉権獲得のためも大きな資金を費やしている。これでは、代理人がよりよい条件を獲得するための材料は少ない。スコット・ボラスは記者会見で、交渉が成立せずに西武ライオンズに戻る可能性について示唆していたが、これをまともに受け取るひとはほとんどいないだろう。
あたかも、スコット・ボラスがごねている、かのような報道がある。たしかに、彼はハードネゴシエイターだろうけれど、代理人として不利な交渉で最善を尽くしているといえるのではないか。
このところ、郵政法案造反組の復党による野田聖子と佐藤ゆかりの争いに関する報道もよく見かける。この争いは、ある意味、選挙のときに野田聖子が勝った時点で勝負がついている。だから、野田聖子には余裕があり、佐藤ゆかりは必死に見えるのだろう。片山さつきは、選挙で城内実に勝っているから、城内実の復党という議論すらなく、次回の衆議院選挙でも片山さつきが自民党の公認をえるだろう。城内実も対立候補として立候補するだろうけれど、状勢は非常に厳しい。一方、佐藤ゆかりは野田聖子に選挙で敗れている。現在の野田聖子の力は、彼女が自分の力で当選したということに基づいている。
佐藤ゆかりの主張を見ていると、自由民主党という会社に転職したかのような意識であるように見える。彼女は、支部長としての権限を主張する。確かに、会社のような組織であれば、役職によって権限が与えられる。しかし、すくなくとも、これまでの自民党では、支部長という役職に権限の根拠があるのではなく、選挙によって国会議員に当選したということに権限の根拠がある。支部長はその選挙区の国会議員に与えられる肩書きに過ぎない。これまでも、公認を得ずに立候補し、当選した無所属保守系の議員が、自民党に入ることはよくあることだった。
しかし、小選挙区制に変わり自民党も中央集権的な政党、いってみれば、会社のような組織に変質しつつある(id:yagian:20050813:p2)。そもそも、かつての自民党であれば、復党が問題になることすらなかっただろう。そういう意味では、野田聖子と佐藤ゆかりの対立は、自民党の変化を象徴しているといえなくもない。