第二言語学習者とクレオール
Lang-8(http://lang-8.com/)で日本語学習者の日本語を読んでいると、いろいろなパターンがあっておもしろい。
完全に独習だというけれど、文法的にも完璧だし、ブログの文章としても自然で、日本人が外国人を語らっているのではないかと思うぐらいの日本語を書く人もいる。
自然習得なのだろうか、文法的な誤りは多いけれど、妙に勢いがあって読ませる文章がある。むしろ誤りの部分もむしろチャーミングだったりする。
学校でこつこつと勉強しているのだろうか、文法的には概ね問題はないけれど、文脈から見ると違和感がある語彙が混ざっている人もいる。多分、辞書を調べながら作文しているのだろう。
多分、頭の中で母語で考えて、それを日本語に翻訳しているから、いかにも翻訳的な文章になっている人もいる。
そういう日本語を読んでいると、自分の書いている英語はどんな印象を与えているのだろうかと気になることもある。実際、どんな印象かネイティブに聞いたこともある。自分で書くのも恥ずかしくもあるけれど、知的な雰囲気な文章で、誤りはあるけれども、日本人特有のものではなくて、非英語ネイティブに一般的な誤りだと言われた。まあ、想定内の答だった。
最近、つれあいから紹介してもらいアゴタ・クリストフ「文盲」という本を読んだ(http://goo.gl/R2NQj http://goo.gl/yK9Af)。第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の時期にハンガリーに生まれ、ハンガリー動乱の時に難民としてハンガリーを脱出してスイスに入国した。当初は、フランス語ができなかったが、フランス語を習得して小説を書くようになった。「悪童日記」で有名である(私は「悪童日記」はまだ読んだことはないけれど)。
「文盲」のなかで、アゴタ・クリストフは次のように語っている。
わたしは、自分が永久に、フランス語を母語とる作家が書くようにはフランス語を書くようにならないことを承知している。けれども、私は自分にできる最高を目指して書いていくつもりだ。
私は、フランス語は読めないけれど、邦訳で読んでも訥々とした文章で、複雑で難しい表現はあまり使っていない(レヴィ=ストロース「悲しき熱帯」とは対極かもしれない)。しかし、彼女の心情はよく伝わってくる。むしろ、その内容と相まって訥々とした文章が効果的ですらある。
確かに、華麗なレトリックを使った英語は書けないし、また、ネイティブがfacebookで書いているようなくだけた英語は書けない(書きたくなるけれど、さすがにハードルが高い)。けれど、自分の書ける英語のなかで「自分にできる最高を目指」し、さらに言えば、自分の第二言語学習者としての特性を活かして、ネイティブには書けない英語、クレオールとしての英語を書けばいいのだと思う。
おそらく、英語には昔からそのようなクレオールの歴史があって、多様な英語が世界で使われている。以前からもいるけれども、最近、特に韓流が流行することで、外国語訛の日本語、クレオールとしての日本語を「カワイイ」と感じる感覚が定着してきた。書き言葉としての日本語のクレオールはまだ十分定着していないけれど、インターネットの世界ではそれが開花しつつあることを感じている。
外国語を学習するときに何を目標にすべきかアゴタ・クリストフは一つのロールモデルを示しているように思う。
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