(近場の)巡礼の旅

鎌倉三十三観音霊場めぐり

五年かけて鎌倉に通い、去年の七月に鎌倉三十三観音霊場巡礼を結願した。

巡礼を始めた頃は、まだまだ知る人ぞ知る、という存在だったように思うが、年を追うごとに御朱印帳を持ってお参りする人に会うようになった。

鎌倉にこれだけいいお寺があることをはじめて知ったし、このような機会がなければ足を運ぶことがなかった場所に行くことになり、鎌倉の魅力をより広く、深く触れることができた。お参りをして、御朱印をいただき、境内の片隅で休憩するひとときは、なにか安心感があってリラックスすることができる。

鎌倉三十三観音霊場巡礼は結願した時、まだ巡礼の旅を続けたいと思った。

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東京の近郊の巡礼

東京近郊にもいろいろな巡礼がある。

秩父三十四観音霊場巡礼は、ハイキングを兼ねて行くにはよさそうだ。これまで、あまり秩父に行ったことがないけれど、鎌倉と同じように新たな魅力を発見できると思う。ただ、わが家から秩父まで少々離れているので、始めるなら、やや覚悟と計画が必要になりそうだと思う。

東京都内には、昭和新撰江戸三十三観音霊場巡礼があるようだ。あまり知らない東京の町を歩くのにも惹かれる。秩父三十四観音霊場巡礼よりは、こちらの方が取り組みやすそうだ。

しかし、この昭和新撰江戸三十三観音霊場巡礼もそれなりに本格的だから、足慣らし(と言うと失礼だけれども)も兼ねて、東京十社めぐりを始めることにした。

東京十社めぐりの楽しみ

東京十社めぐりは、お寺ではなく、神社を巡るものだ。Wikipediaによると1975年に企画されたようで、歴史はやや浅く、観光要素も強い。鎌倉三十三観音に比べると宗教的な感じは乏しいけれど、逆に、それだけ気軽に回ることができるとも言える。

東京十社 - Wikipedia

私が勤める会社は赤坂にあり、まずは昼休みを利用して、日枝神社赤坂氷川神社からスタートした。日枝神社は毎年初出勤のときに初詣をしていてなじみがある。赤坂氷川神社は、会社からさほど離れていないけれど、今回はじめて参詣した。雑居ビルやマンションが立ち並ぶ地域のなかに丘があり、その丘の上だけが急にひっそりとした森になっている。こういう森のなかでほっと一息をついていると、南方熊楠の神社合祀への反対運動(南方熊楠 神社合祀に関する意見)は先見性があったと再確認する。東京はこういった神社によって緑の空間が守られている。

次に、休日を使って下町の神社を巡った。亀戸天神にお参りをして(このとき、中国語検定の試験前で「神授鉛筆」を買った。この後、めでたく中国語検定四級に合格できた。)、白河清澄に足を伸ばして清澄庭園ブルーボトルコーヒーに立ち寄り、深川不動富岡八幡宮にお参りをして、最後は門前仲町の居酒屋で仕上げた。下町に足を伸ばすことは少ないから、珍しさもあって楽しかった。

その次は、やはり休日を利用して、文京区の神社を中心に参拝した。神田神社からスタートして谷中まで歩き、Tokyo Bikeで自転車を借りた。そのあとは、森鴎外記念館、根津神社白山神社を巡り、谷中に戻って自転車を返し、谷中ビアホールで仕上げた。このエリアはなじみ深いけれど、森鴎外記念館は行きたいと思いながらなかなか機会がなかったので、いい機会になった。東京十社になっている神社に行くだけではなく、その近くのところをついでに寄るのも楽しい。

残りの三つの神社は散在しているので、それぞれ機会を作って参詣することにした。王子神社は自宅から片道約5kmなので、ジョギングと兼ねてお参りした。芝大神宮は、芝で食事会があったので、立ち寄ることができた。品川神社については次の節で書こうと思う。

東京十社めぐり結願と江戸五色不動、江戸三大鬼子母神巡礼へ

東京十社めぐりもあと品川神社だけになったので、このゴールデンウィーク中に結願して、新しい巡礼を始めることにした。

新しい巡礼として、まずは、わが家の地元にある目白不動雑司ヶ谷鬼子母神が含まれる江戸五色不動と江戸三大鬼子母神巡礼をしよう、そしてそれらが終わったら昭和新撰江戸三十三観音霊場巡礼に取り組もうと思った。五色不動は「虚無への供物」(いま、アマゾンで検索したら、Kindle版はあるものの、紙の本は品切れになっているようで、かなりショックを受けている)で印象深い。鬼子母神は、バリ島に旅行したときに、鬼子母神にあたる神が祀られているのを発見して、インドからかたや日本、かたやバリ島に受け継がれているのを知って、感動した記憶がある。

新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)

新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)

 
新装版 虚無への供物(下) (講談社文庫)

新装版 虚無への供物(下) (講談社文庫)

 

まず、ゴールデンウィークのある日、近所に散髪についでに、雑司が谷鬼子母神目白不動御朱印をいただいた。雑司が谷鬼子母神は、副都心線雑司が谷駅ができてから、特に休日はにぎわっているけれど、目白不動はひっそりとしたお寺という印象があった。しかし、ゴールデンウィーク中は、私以外にも御朱印をいただきに来ている人がいて、以前よりはずいぶん参詣する人が増えているようだった。

そして、十社めぐりの最後の品川神社に行くことにあわせて、まず、三軒茶屋にある目青不動にお参りをして、バスに乗って目黒不動に行き、さらにバス乗り品川神社にお参りをして、最後はTY Harborに行って結願を記念してビールで打ち上げをした。

三軒茶屋から目黒不動までの東急バスは、田園都市線東横線目黒線の間の住宅地をぐるぐると巡って、車窓からふだんは目にすることのない地域を眺めることができた。目黒不動ははじめてお参りをしたのだけれど、思ったより立派なお寺で、武蔵野の林を風が吹き抜け、木々の葉を鳴らす音を聴いていると、東京にいるのに日常を忘れることができる。品川神社は、かつての海岸沿いの崖の上にある。おそらく、江戸時代だったら江戸湾を一望できたのだと思う。今は、目の前には埋立地が広がっている。

鎌倉三十三観音霊場めぐりは、かなり観光化されているといえ、宗教的な雰囲気が濃厚に残されている。それに比べると、東京十社めぐりはかなり世俗化、観光化されている。しかし、「旅するように暮らす」楽しみは存分に味わうことができたように思う。

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