一方通行

昨日の夜、久しぶりにつれあいと神楽坂にくりだした。
すしをつまみながらビールを飲み、バーでスコッチをひっかけ、あんみつをおみやげに買って帰った。
神楽坂の通りは、午前と午後で一方通行の方向が変わる。夕方、タクシーで雑司が谷から神楽坂に行こうとすると、反対方向の一方通行になっていて都合が悪い。大久保通りに回ってもらい、神楽坂上でタクシーを降りる。
タクシーの運転手によれば、神楽坂の一方通行が時間帯によって変わるのは、田中角栄が国会議事堂へ往復するのに都合がよいからだという。午前中、目白台から江戸川橋を抜けて、神楽坂上から飯田橋を通り霞ヶ関に至る。午後は、逆ルートで国会議事堂から目白台に戻る。たしかに、田中邸から国会議事堂までの最短距離である。
神楽坂のすし屋でこの噂について聞いてみたところ、真偽のほどはわからないけれど、たしかにそのような噂はあり、神楽坂の芸者の妾宅に通うにも都合がよかったという噂のバリエーションもあるという。
興味深かったのは、噂の真偽はともかく、噂話をした人は皆、田中角栄だったらそのくらいのことをやりかねないと思い、また、そのような田中角栄に悪印象を持っていないことだった。タクシーの運転手は、この噂話をしながら、「さすが角栄さんだ」と感に堪えないと言った。
バーでは、つれあいがラガヴリン、私がラフロイグをいっぱいずつ飲んだ。最近は、バーに行くこともなく、ずいぶんスコッチを飲んでいなかった。しかし、ひさしぶりに飲むと、複雑な味わいが実においしい。燻したような香りをかぎながら、冷えた身体が内側から暖まってくると、ゆったりとした心持ちになる。
帰りがけ、つれあいのおすすめの紀の善のあんみつを買って帰る。こどもの頃、相撲見物のおみやげがあんみつだった覚えがある。あんみつの豆が苦手で、それだけ除けて食べていた。紀の善のあんみつは、シンプルで、寒天、豆、あんこに、求肥が一切れ。ミカンは入っていなかった。あんこの甘みが抑えめで、上品な味でおいしかった。