同性婚、支持はしたいけれど、すっきりしない

月曜日のウェブログ(id:yagian:20070625:1182775126)に、ニューヨークでのゲイのパレードの記事を引用した。同性婚の運動について、あれこれ考えているけれど、どうももやもやしてすっきりしないところがある。自分の考えを整理するためにも、とりあえず、思いつくことを書いてみようと思う。
まずは、問題の記事をもう一度引用する。

"I don't know why someone else's marriage has anything to do with me," Elizabeth Edwards said at a news conference before the parade. "I'm completely comfortable with gay marriage."

「誰か別の人の結婚が、どうして私に関係するのかわからない。私は、同性婚にかんぺきに満足している。」とパレードの前の記者会見でエリザベス・エドワーズは語った。

"Religious groups take lead for gay pride" by KAREN MATTHEWS Associated Press Writer, June 24, 2007, 10:15PM, 2007 The Associated Press (和訳の文責はyagian)
http://www.chron.com/disp/story.mpl/ap/nation/4916664.html
エリザベス・エドワーズさんの気持ちは理解できる。自分たちの結婚生活には満足している、だから、他の異性愛者の人の結婚と比べて批判するのはやめてほしい、ということなのだろう。しかし、単に生活を共にしているだけであれば、そのとおりだが、結婚ということになれば、この主張はあきらかに間違っている。
なぜなら、異性愛者の結婚という文化、制度がなければ、その形式を活用した同性愛者の結婚という営みもないはずだ。エリザベス・エドワーズさんが同性婚をしたのは、異性愛者の結婚を参考にしている。だから、はじめから、他の人の結婚とエリザベス・エドワーズさんの結婚はかかわりがある。さらに言えば、カップルが単に生活を共にすることと、結婚することの間には、なんらかの社会的な承認があるか、ないかという違いがある。これは、異性愛者同士のカップルでも同じことで、単に生活を共にしているカップルもあれば、社会的な承認を得て結婚しているカップルもある。だから、同性愛者が単に生活を共にすることにとどまらず、結婚を求めるのであれば、カップルが満足しているだけでは不十分で、社会的な承認を得なければならない。
文化や慣習によって、苦しんでいたり、自由や権利を妨げられている人たちがいる。そのような問題は、解消すべきだと思う。しかし、一方で、文化や慣習がなければ、社会生活は成立しない。その間のバランスをどこで取るべきか、ということがよくわからない。
同性愛者間の結婚も、現在の異性愛者の結婚と同じ権利を与えるべきだ、という主張には、同意する。それでは、近親婚をしたいという人がいた場合、そのカップルにも同じ権利を与えるべきだろうか。さらに言えば、当事者が同意している場合の重婚、一夫多妻、多夫一妻の場合は、どうだろうか。当事者合意の上している一夫多妻の家族があり、戸籍上は入籍していない第二夫人が、第一夫人と同じ法的な権利を認めるべき、との主張があったら、どうだろうか。
私は、上記の主張はすべて認めるべきだと考えている。ただし、現在の戸籍制度、家族制度などと抵触するところが多いので、どのような制度設計をするかは別の問題としてあるけれど。同性婚を主張している人は、そのような人たちと連帯することができるのか、または、近親婚や一夫多妻は認められないと考えるのだろうか。
また、考えてみれば、夫婦関係にあれば保護されている権利が、他の人間関係の場合には保護されていない場合がある。配偶者に財産、相続などにおいて特別の権利が認められているのは、生計、生活を共にしているという理由が根拠になっているのだろう。もしそうであれば、例えば、配偶者の両親、義理の親の介護をした場合、財産、相続において、法的な権利が認められてしかるべきとも思えるが、現在では、そのような権利はなく、実際も相続時にトラブルになることが多いようだ。もし、結婚という制度を拡張するのであれば、夫婦関係になくとも、生計を共にし、貢献した人の権利を保護するような方向に拡張すべきかもしれない。
ちょっと混乱してきた。ここで、議論をまとめようと思う。

  • 文化、慣習、制度によって自由や権利をうわばれている人のために、なるべく不利益が生じないように文化、慣習、制度を変えていくべきだ。
  • 現在の結婚制度からは同性愛者は排除されており、同性愛者のなかには結婚を求めているカップルがいる。自分は、これを認めるように文化、慣習、制度を変えていくべきだと思う。
  • さらに一般的に考えてみると、同性愛者以外にも結婚制度から排除されている人たちがいる。たとえば、近親婚、一夫多妻、多夫一妻など。これらのカップルも、当事者が納得をしていれば、結婚を認めるようにすべきだ。また、同性婚を主張する人たちは、これらの主張と同調し、連帯すべきである。
  • ただし、これらの制度を認めるには、現行の戸籍制度、家族制度の大きな改変を伴うため、慎重に制度設計すべきである。
  • 結婚制度の機能には、生計を共にする人の権利を擁護するという側面がある。夫婦関係にはないけれども、生計を共にする場合、たとえば、血縁関係のない配偶者の両親、義理の親を介護した人の権利を擁護する制度は不在である。結婚制度を拡張するには、このような側面も考えるべきだ。

同性婚から議論が離れてきたけれど、多少はすっきりしてきた。
家族制度には、他にも気になっていることがあるので、また、いずれ書いてみたい。