ウェブログの心得

新訂 福翁自伝 (岩波文庫)

新訂 福翁自伝 (岩波文庫)

更新されると必ず読んでいたウェブログが閉鎖されてしまった。
このウェブログの作者には似合わないやや感情的な批判が書かれたエントリーがアップされ、コメント欄に批判された当事者からの反論のコメントがつけられ、結局、謝罪文とともにそのウェブログは閉鎖されてしまった。ウェブログを書くのも閉鎖するのも作者の自由だけれども、こんなトラブルで閉鎖になるのは残念に思う。
「福翁自伝」のなかに、福沢諭吉が設立した新聞である時事新報の執筆者へ向けた心得がでてくる。私がウェブログを書くときに気をつけていることとほとんど重なっていたので、紹介したいと思う。

……執筆者は勇を鼓して自由自在に書くべし、但し他人の事を論じ他人の身を評するには、自分とその人と両々相対して直接に語れるようなことに限りて、それ以外に逸すべからず、如何なる劇論、如何なる大言壮語も苦しからねど、新聞紙にこれを記すのみにて、さてその相手の人に面会したとき自分の良心に恥じて率直に述べることのかなわぬことを書いていながら、遠方から知らぬ風をしてあたかも逃げて回るようなものは、これを陰弁慶の筆という、その陰弁慶こそ無責任の空論となり、罵詈讒謗の毒筆となる、君子の恥ずべきところなりと常に警めています。……

あまりにも気をまわしすぎるとおもしろい文章は書けない。いくら自分なりに配慮しても、気がつかないこともある。「勇を鼓して自由自在に書」こうと思っている。そのとき、面と向かって話せることを気をつけていれば、仮に批判されても、自分に非があると思えばすなおに謝罪して撤回できるし、自分に非がないと思えば堂々としていられると思う。そして、「陰弁慶」の無責任な批判は無視すればいい。
人間である以上、間違えるときは間違える。間違えることが問題なのではない。間違えたときにどのように対応するかが問題なのだと思う。