マインドマップの特徴

いくつか実際にマインドマップを作りながら「ザ・マインドマップ」を読んだ感想を書いてみたいと思う。今日のエントリーも、マインドマップを使って書いてみた。
マインドマップは、キーワードやキーフレーズを構造化する手法で、似たものに川喜田二郎KJ法やロジカル・シンキングで紹介されているロジック・ツリーなどがある。マインドマップは、KJ法とロジック・ツリーの中間的な手法だという印象を持った。
この三つの手法のなかで、KJ法がいちばん柔軟で、構造化されていない。逆に、ロジック・ツリーは、構造に関する規則が明確で、作成されるツリーはもっとも秩序だっている。
KJ法は、文化人類学者が直面する一見無秩序に見える社会的な事象のなかから何らかのパターンを見いだすことを目的として開発された。この三つの手法のなかでは、もっとも無秩序な事象を対象としているために、柔軟性が高い。
一方、マインドマップやロジック・ツリーは、人間が発想の発想を対象としている。人間の発想は、もともと、完全に無秩序なのではなく、はじめからある程度の秩序、構造を持っている。このため、KJ法より規則的な性格が強いと思う。
ロジック・ツリーは、成果の構造化を主眼におき、マインドマップは発想の創造性を主眼においているところが、この両者の相違となっているのだろう。
これらの手法は、その対象、目的によって使い分ければよいと思う。私の感想では、発想法としてはマインドマップが優れているように思う。ブレーンストーミングのようなさまざまな人の断片手金アイデアをまとめるにはKJ法が適している。最終的にプレゼンテーションをまとめる時には、ロジック・ツリーを適用することで、より論理性が高まると思う。
しばらく前のエントリーへの稲本のコメント(id:yagian:20080315:1205583769)に書いてあったポストイット法は、KJ法マインドマップの中間ぐらいに相当しそうだ。私は、文章を書くときの下書きに階層化された箇条書きを使うことが多いが、これは、ロジック・ツリーとほぼ同じ考え方だと思う。
「ザ・マインドマップ」には、手法の基礎となる思考と記憶に関する理論が書かれているが、納得できる点が多かった。思考と記憶は「ある言葉から別の言葉を連想するプロセスである。」と語っている。これは、以前に書いたエントリー「パラフレーズ」(id:yagian:20060215:1140008067)とほぼ共通している。マインドマップは、トニー・ブザン風にいうと「連想」、私風にいうと「パラフレーズ」を図示する手法といえる。
マインドマップはもともと記憶を固定するためのノートテイキングの方法として開発されたという。

脳は学習の過程で次のようなことを主に覚えている……すでに蓄積された項目やパターンに結びつくもの……目立つ方法や変わったやり方で強調されたもの……関連づけと強調がうまく行えるノート法は何かと自分に問い続けた結果……マインドマップの最初の構想を思いついた。

自分の記憶のことを考えてみると、関連づけが記憶のポイントになっていると思う。学校に通っていた時の試験勉強では、授業内容を授業時間の情景、先生の口調、黒板の図像と関連づけて記憶していた。マインドマップを作るという作業、図像が記憶に結びつくことはよくわかる。自分でマインドマップを作ってみると、たしかにしっかりと記憶に残っている。
マインドマップは、実用的には「考える作業と書く作業から切り離すことによって、より明確に、より広くものをとらえることができるようになった」ことがもっとも意味があると思う。
文章を書きながら考えている場合より、マインドマップという形で思考をすると、スピードが早いため、限られた時間だとより公汎な連想、発想が可能になる。構造が図示されるため、より明晰な構造の思考ができる。
しかし、マインドマップは、柔軟性が高い分、プレゼンテーションには向いていないと思う。つまり、他の人が作ったマインドマップを見ただけではその内容を理解することが難しい。文章やプレゼンテーション資料を作る前の思考の補助として使うことが最も有効だろう。
いったんマインドマップを作ってしまうと、頭のなかに図が入る。そこから文章を作る作業は、頭のなかだけで進めることができる。文章を練ることで、アイデアの熟成が進む。マインドマップから文章化というプロセスを経ることで、人に伝えるレベルのものとなっていくと思う。
最近、マインドマップを使って文章を書いているが、やはり文体に影響を与えているように思う。なんとなく、文章としての味わいのようなものは、ちょっと欠けてしまうように感じられるところが気になっている。
なお、マインドマップの作成には"Mindomo"(http://www.mindomo.com/)を使っています。

ザ・マインドマップ

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発想法―創造性開発のために (中公新書 (136))

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ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)

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