ティーパーティー・ムーブメントとネオコン

いつも読んでいる「溜池通信」 (http://tameike.net/) というウェブサイト(まだウェブログ化されていない!)に、毎週、一本レポートが掲載されるのだが、今週は「中間選挙後のオバマ政権と米国外交」 (http://tameike.net/pdfs8/tame457.PDF) というタイトルだった。
最近、サラ・ペイリンティーパーティー・ムーブメントに興味を持って追いかけているけれど、このレポートの中に興味深い記述があった。

 従来の共和党は、国防に理解を示してきた。今回の中間選挙用に掲げた「米国への誓約」(Pledge For America)でも、防衛費はムダ削減の聖域とされている。小さな政府を唱えつつも「国家安全保障は別枠」との了解があるからだ。
 ところが、TP議員が標榜するのは「制限された政府」(Limited Government)である。社会保障費や教育費と同様、防衛費もバッサリ切るべしと考える。ミサイル防衛計画、欧州やアジアの米軍基地、核兵器の規模も俎上に上げようとしている。外交・安全保障関係者としては戦々恐々といったところだろう。

同じ保守派といっても、つい数年前に話題になっていたのは「ネオコン」でだった。「ネオコン」の陰謀によってあたかもアメリカが世界を操っているかのような議論すらあった。たしかに、「ネオコン」の論者は、アメリカ的正義を世界に広げることを標榜していたから、国際協調よりは一国であってもアメリカ的正義に合致すると考える行動をとることを主張していた。
おもしろいことに、ティーパーティー・ムーブメントを支える草の根保守も、国際協調よりは自国の利害のみを優先するが、「ネオコン」とは対照的に、過激なモンロー主義的な主張になる。
共和党にせよ、民主党にせよ、アメリカ政治の主流派に属する政治家にとって、とるべきだと考える手法には相違があったとしても、アメリカが国際秩序の形成に貢献すべきだという考え方は共有されている。しかし、ティーパーティー・ムーブメントは、ある層のアメリカ人の本音むき出しで、アメリカがそのような国際的な責任を果たす理由はないと考える。
アメリカによるテロへの戦争、アフガニスタンイラクへの侵攻に批判的な人は多いと思う。また、日本のアメリカ軍基地の存在が理不尽だと感じる人も多いだろうと思う。しかし、政治的な主義主張とは別に、ほんとうのところ、アメリカが国際秩序の形成に、役立っているのか、役立っていないのか、冷静な判断というもの聞きたいと思う。
仮に、ティーパーティー・ムーブメントが主張するように、アメリカが、本当の意味で自国の国益のみを追求し、国際秩序の形成から手を引いたらどうなるのだろうか。戦争やテロは増えるのか、減るのか、それとも、無関係なのか。仮に、アフガニスタンから撤退し、海外の基地を撤収したら、テロはどうなり、北朝鮮や中国はどのように行動するのか。また、それに対して日本は世論はどのように動き、軍備強化が進むのか。むしろ、東アジア共同体の形成に向かって進むのだろうか。
党派的な立場から中立的な評価をできる人がいたらぜひ意見を聞いてみたい。