米国と北朝鮮の関係について考えてみた
トランプ大統領が北朝鮮との首脳会談をキャンセルすると発表した。
ちょっとここで米国と北朝鮮の関係と今後の展開を考えてみようと思う(素人考えだけれども)。
北朝鮮の目的:米国に対する核武装の実現
北朝鮮がもっとも重視している目的は明確である。現体制の維持だ。彼らは、この目的に向けて合理的に行動しているように見える。
北朝鮮の現体制に対する最大の脅威は米国である。米国には、朝鮮半島の問題を最終的に解決するために北朝鮮の現体制を変更する必要があると考えている有力な政治勢力があるし、また、軍事的にそれを実現する力も持っている。
北朝鮮が米国の脅威に対処するためには、米国を攻撃できる核武装を実現することで、米国からの攻撃に対する抑止力を持つことを一貫して目指してきた。そして、さまざまな時間稼ぎをしつつ、その実現が近づいている。
米国の目的:北朝鮮の核武装の意図の放棄
米国としては、北朝鮮が米国に核攻撃できる能力を持つことは許容できない。しかし、これまでは、北朝鮮の現体制の転覆することや、直接軍事的な攻撃をすることで阻止することに踏み切ることはできなかった。
時には北朝鮮は交渉に応じる姿勢も見せたが、上記の通り、彼らは米国を攻撃できる核武装を実現することを一貫して目指していたので、交渉によって核武装を放棄させることはありえなかっただろうし、現実にも実現しなかった。
この観点から見れば、オバマ大統領の「戦略的忍耐」は、北朝鮮の時間稼ぎに資するだけで、彼らが核武装の意図を放棄することにはまったく効果がなかったと言わざるをえないだろう。
米国と北朝鮮の利害関係
今回、米国と北朝鮮の交渉の可能性が開けたのは、トランプ政権が核武装の放棄は求めるが、現体制の変更は求めないという立場だからだろう。
オバマ政権は、人権侵害などの観点から北朝鮮の現体制の維持を倫理的に認めることができない。だから、現体制の維持を最重要の目的とする北朝鮮とは交渉することができない。
北朝鮮からみれば、核武装は現体制の維持のため米国からの脅威に対抗する手段だから、米国の脅威がなくなれば核武装を放棄することはありうるだろう。ただし、現体制が維持される、という確約があってはじめて核武装の放棄に合意できる。
一方、米国は北朝鮮の体制維持を保証できるのだろうか。できることは、せいぜいトランプ政権下では体制転覆をしない、という約束にとどまるだろう。米国の政治体制から考えれば、政権交代のあともことまで確約はできないだろうし、仮にそのような約束をしたとしても北朝鮮側は信用できないはずだ。
だから、北朝鮮の現体制の維持への確約と朝鮮半島の非核化を取引する、ということは原理的に不可能に見える。
米国と北朝鮮の交渉の可能性
それでは、米国と北朝鮮の交渉の可能性はどこにあるのだろうか。
もし合意に至るならば、米国が北朝鮮の圧力を強め、北朝鮮がこのままだと核武装をしていても現体制が維持できないと思い、一方的に朝鮮半島の非核化を受け入れる、という形しか考えにくい。
おそらく、トランプ政権が狙っているのはこの決着なのだろう。そして、現段階で米朝首脳会談をしても、北朝鮮が「屈服」をして一方的に朝鮮半島の非核化を受け入れる状況になっていないと考え、会談をキャンセルしたのだと思う。トランプ政権としては、北朝鮮を屈服させることを目指して圧力を強め続けるだろう。
もう一つの可能性としては、アメリカが朝鮮半島の非核化を断念して、北朝鮮を事実上の核保有国として認めること。日本にとっては厳しい選択だが、この可能性も十分ありうると思う。