日本的小説と中国的小説
中国語のレッスンに行って、ちょっと興味深いことがあった。
教科書にちょっとした説話があった。以下のような話である。
老婆と子供がある食堂に入ってきた。老婆は自分は食事はしたからお前はご飯を食べなさいと言ってスープ入りご飯を一人前注文した。子供は老婆に本当に食事はしたんだね、と確認して食べ始めた。
それを見ていた食堂の主人は、今日百人目のお客様だからスープ入りご飯は無料ですよ、と言い、代金を取らなかった。
ある日、食堂の主人は、その子供が店の前にいるのを見つけた。どうやらその食堂に入っていく客の数を数えているようだ。主人は、今日は百人も客が来そうにないと思い、常連に電話を入れて、今日はおごりにするから店に来てくれと伝えた。
99人の客がやって来た後、その子供がお店に入ってきた。今度は、無料のスープ入りご飯をご飯を老婆に食べさせていた。
先生がこの続きはどうなるか、考えてみてと言った。自分の答えはこんなだった。
その子供が大きくなり、少しお金ができた。老婆を連れてその店にやって来た。三杯のスープ入りご飯を注文した。一杯は老婆、一杯は自分、そして、もう一杯は主人に奢り、三人で一緒に食べた。
先生は、日本の小説みたいだ、と言った。自分は、へえ、と思った。
先生によると中国の小説では、恩義には思いきり大きな返礼をするのだと。
自分は、もう一つの話を作ってみた。
その子供が大きくなり、商売に成功した。また、老婆を連れてそのお店にやってきた。そのお店にやってきたお客すべて奢った。その評判を聞き、常連たちが次々とやって来た。九十九人のお客が来た後、その子供は主人に無料のスープ入りご飯をください、と言った。
先生は、まだまだ日本の小説みたいだ、中国の小説はこんな風だよと言って、次の話をした。
食堂の主人は、ささやかな商売を細々と続けていた。ある日、店の向かいに工事が始まった。気がつくと、豪華な中華料理店が建設されている。ああ、こんな店ができたら、もうこの店はたたむしかないと思う。工事が完成したら、その子供が店にやってきた。さあ、あの向かいの店はあなたのものですよと。
なるほど。
こういう瞬間、語学を勉強することが面白いな、と思う。