官僚的対応

今月いっぱいは、だいたい半日は仕事、半日は勉強という恵まれた環境で過ごさせてもらっている。忙しい時にはできないが、将来的には会社にも貢献できるというような勉強をしなければと思っている。
今日は、豊島区立中央図書館で借りてきた、エリヤフ・ゴールドラット「ザ・ゴール2 思考プロセス」を読んでいる。
この本を借りる時、あらかじめインターネットで図書館に在棚していることを確認していたのだが、探すのに手間取ってしまった。ビジネス本だから、最初は経営の棚を眺めてみたけれど見つからない。改めて図書館のコンピューターで検索すると、文学の棚にあるのがわかった。たしかに小説仕立てだから文学に分類するのもわからなくはないが、内容はビジネス本であるし、読者もそのつもりで読むはずだから、この分類はおかしいと思った。
事を荒立ててもと思いながらも、分類を直してもらった方が、図書館の利用者も混乱しないだろうと思い、リファレンスのコーナーに行って、この本は経営学に分類する方が適切だと説明をした。恐らく、リファレンスの人は、本の分類を変える権限を持っていなかったのだろう。また、本の分類を変えた方がいいというクレームを受け付けた経験もなく、どのように処理してよいかわからなかったのだろう。一応、小説だから文学に分類してあるのだと思いますと、ぶつぶつと繰り返す、実に官僚的な対応だった。
自分としては親切心のつもりだったのだが、先方から見れば無体なクレーマーに見えたのかもしれないと思い、割り切れない気持ちのまま、そこはそのまま引き下がることにした。
さて、余談はともかく、「ザ・ゴール2」の中身の話に入りたいと思う。
この本は、著者のエリヤフ・ゴールドラットが提唱した生産管理・改善のための理論TOC(Theory of Constraints)を小説のかたちで紹介したシリーズの第二弾である。この本では、TOCのなかでも問題発見、解決のための「思考プロセス」と呼ばれる手法の説明が中心となっている。
興味深く読める本ではあるが、小説仕立てのため、TOCや「思考プロセス」のイメージはおぼろげながら理解できるが、手法を体得することはできない。他に、手法の解説本を読むなり、研修を受けるなりのトレーニングが必要だろう。
また、この本を読んだだけの印象ではあるが、「思考プロセス」を実際に実行するには、それなりの思考能力、センス、経験が求められるように感じた。問題解決ということが難しいことである以上、簡単に問題解決できる手法もあるはずないのではあるが。この本のなかにも次のように書かれている。

 経験と勘がなければ、どんな方法も役に立たない。……経験と勘があればそれで大丈夫かというとそうではありません。経験と勘はソリューションを見つけるための必要条件ですが、それだけでは不十分です。実用性のあるシンプルなソリューションを見つけるには、経験と勘を活かすための手段が必要なんです。(p124)

「経験と勘を活かすための手段」こそが、TOCであり、「思考プロセス」であるのだろう。無から問題解決をすることはできないし、また、経験と勘があっても問題解決に到達するロードマップが必要である、ということなのだろう。
印象に残った個所をあと二つ引用したい。

コンフリクトに直面した時は、妥協して問題を回避してはいけない。……まずは、コンフリクトを正確に言葉で表してみる。
(P31)

「思考プロセス」では、さまざまな問題、コンフリクトを図示して整理する。ロジックツリーにせよ、マインドマップにせよ、KJ法にせよ、さまざまな知的技法は、問題を書きだすことで可視化することからはじまる。これは、なかなか面倒なことなので、問題が深刻であるほど図示したり、言葉でいい表すことを回避してしまいがちである。まずは、表現することから問題解決の第一歩が始まるのだろう。

一つひとつの症状の原因を潰すだけでは、十分ではありません。すべてのUDE(山羊註:現状の問題点のこと)を引き起こす原因となっている”コアの問題”を正さなければ意味がありません。
(p218)

TQMでいう「重点指向、源流管理」、なぜを5回繰り返して原因を追究するトヨタの「なぜなぜ分析」と似たことを言っている。これも、現実には億劫で、”コアの問題”までたどり着くのは難しいことが多い。しかし、「”コアの問題”を正さなければ意味はない」という指摘はまったくもっともである。
「ザ・ゴール2」からは、手を抜かず、問題を可視化して、それを用いて考え抜くことの重要さを教えてもらったように思う。

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス