PMO(Project Management Office)という仕事

今、会社でPMO(Project Management Office)という部署で仕事をしている。
私たちの会社がお客様に提供している仕事のほとんどは、projectという形態をとっている。PMOという部署のmissionは、projectが成功するための支援をすることである。
正直に言って、私たちの会社のPMOは弱小だし、具体的な業務の範囲も明確に定義されている訳ではない。そもそもPMOは何をすべきなのか、特に、現在のリソースが限定的な私の会社のPMOはなにを優先的にすべきなのか考えてみようと思う。
projectに限らずmanagementの方法は何かひとつの正解があるというものではない。結局、成功しさえすれば、どのような方法を採用してもよい。逆に、projectが失敗してしまえば、いかに「教科書」的な方法を忠実に実行したとしても意味はない。
とはいえ、project managementという領域では、過去のprojectの成功体験を集約して一定の方法論が提示されている。また、私たちの会社のなかにも膨大なprojectの経験や教訓が蓄積されており、私たちの会社固有の領域のprojectに関する方法論もある程度は整理されている。それぞれのprojectを立ち上げる時に、まったくzeroからproject managementの方法を考えるよりは、一般的な、また、私たちの会社としてのproject managementの方法論を適用したほうが効率的だし、projectの成功の確率は高まるはずだ。そのためには、project managementの標準化が必要になる。
project managementの標準化には二つのstepがある。ひとつは標準を洗練し続けること。もうひとつはその標準を普及し、実践することである。
PMOは、project managementの領域では新しい方法論が提案され、洗練されている。その情報を収集し、さらには、新しい方法論の提案に貢献する。また、私たちの会社のprojectの経験を教訓としてまとめる。社外と社内のproject managementに関する情報、経験、教訓を踏まえ、project managementの標準を洗練し続けなければならない。
その標準を実際のproject managementにおいて実践するためには、二つの方法があると考えている。ひとつは規則、手続きに組み込むこと、もうひとつはproject managerへの教育である。
project managementの方法、要素のなかで、特に重要であり普遍的なものは、規則、手続きに組み込み、確実に実行させるようにいわば「強制」する。規則、手続きにすることでmanagementのcostが生じるし、また、柔軟性と背反することもあるので、必要なものに限定することも重要である。規則、手続きは、その本来の主旨が理解されていないと形式主義的なものとなり、形骸化することもあるので注意が必要である。
規則、手続きの背後にある考え方の理解や「強制」はしないけれども有益な標準の共有のためにproject managerへの教育が必要になる。教育にも二つの側面があると考えている。
ひとつは「標準」を形式知として提供することであり、もうひとつはproject managerが実際にprojectに直面したときに何をすべきか判断し、実践するための能力を育成することである。
前者は集合研修、e-learningなどによって「形式的」に実施することができるが、後者は教育方法自体の方法論が確立されていないこともあり、不十分になりがちである。しかし、「形式的」な方法論を知らなくてもprojectを成功させることはできるが、適切なproject managementの実践なくしてはprojectを成功させることはできない。この意味で、project managerの教育としては後者の方がより本質的である。また、「形式的」なproject managementの方法論の知識を提供しても、それを実践しなければ意味はない。語学の学習において文法の習得は有益だが、それを実際の言語の理解、運用に活用しなければ無価値であることと同様である。
語学の比喩をもう少し使って考えると、教室での語学の知識の提供だけでは実践的な言語能力の習得には不十分である。実際に現場でまとまった量の言語の運用をしなければ実践的な意味での言語能力の習得はできない。また、ただ漫然と言語の運用をするだけではなく、内省することも重要である。これと同様にproject managementでも、集合研修やe-learningによって標準的な方法論の形式知として提供することはproject management教育のごく一部分であって、その後project manager自身による実践、経験、その内省と教訓化がなされなければならない。
今、私自身が取り組んでいるPMOとしての業務は、それぞれの段階で不十分極まりない状況にあるが、project manager自身の自立学習をいかに促進、支援するのか、という点が特に不十分であり、また、そこを突破すれば大きな効果が得られるように感じている。
最後にまとめてみよう。
project managementの品質を向上させるためには、社内外の情報を収集、分析し私たちの会社に適した標準を不断に洗練することが必要である。それを実際のprojectのなかで実践するためには、規則、手続きに組み込むことと、project managerへの教育の二つの方法がある。教育には形式知として標準を提供することと、project manager自身による自立学習の促進、支援がある。いずれの要素も重要であるけれど、project managerの自立学習が大きな課題となっている。