大河ドラマは歌舞伎だったのか
大河ドラマが見れない
テレビドラマ自体、続けてみるのが苦手なのだが、特に大河ドラマを見ることができない。
歴史には人並みには興味があるのだが、逆に、それゆえ、現代的なメイクをしている女優がでてきたり、いったいいつの時代の言葉遣いなんだという不思議なセリフを聴いたりすると、もうその瞬間で萎えてしまってチャンネルを変えてしまう。
熱心に見ていたわけではないけれど「平清盛」は、上記の意味では悪くなく、気持ちが萎えることはなかった。しかし、大河ドラマのなかでは評判が悪く、視聴率も低かったという。
いったい、大河ドラマの視聴者はどんな気持ちで大河ドラマを見ているのだろうか、不思議に思っていた。
「竜馬がゆく」の「竜馬」は誰か
似たような話は、歴史小説にもある。
「竜馬がゆく」を読んで、坂本龍馬のファンになったという人がいる(最近はもう絶滅しているかな?)。しかし、実際に「竜馬がゆく」を読んでみると、この小説のなかの「竜馬」は、司馬遼太郎が幕末の時代に仮託して描いた青春小説の主人公としての「竜馬」であり、歴史上の存在である「坂本龍馬」とはどれほど関連があるかはなはだ疑問である。
「竜馬がゆく」は痛快青春小説として読むことができる(私のテイストではないが)けれど、歴史小説として読みだしたら、あっという間に萎えてしまいそうだ。
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「西郷どん」月照との入水(古いですが)
しばらく前の話になるけれど、「西郷どん」で月照を菊之助がやっているというので、入水する回を見てみた。今、脂が乗っている歌舞伎役者では、菊之助がいちばん好きだ。怪しげな色気があっていい。
今回の入水シーンでも、菊之助の怪しい魅力がよく表現されていた。菊之助は、ほとんど歌舞伎そのままの演技で、歌舞伎的美学に従った美しさを表現しようとしており、史実を再現しようという気持ちはないように見えた。そして、私はその演技に見とれてしまった。
そして、大河ドラマは歴史ドラマではなく、歌舞伎だったということに、ようやく気がついた。
歴史ドラマだと思うと、その当時の時代や史実が再現されていないと気になって萎えてしまう。しかし、時代物の歌舞伎だと思ってみれば、そもそも時代や史実が再現されているものとは思わず見るので、その点は気にならなくなる。「竜馬がゆく」を痛快青春小説としてなら読める、ということと似ている。
とはいえ、菊之助の登場シーンが終わった「西郷どん」は、もう見ていないけれど。