前衛芸術家、革命家としてのジョン・レノン

最近、ジョン・レノンの音楽を聞いている。
ビートル時代ももちろんいいけれど、ソロになってからの方が、というか、オノ・ヨーコと結婚してからの方が、よりラディカルになっていて、そこが気に入っている。
ジョンには、"Imagine"のスイートな"Love & Peace"の伝道師というようなステレオタイプがあって、なかなかジョンのファンだとは公言するのが恥ずかしいところがある。
しかし、そもそも"Love & Peace"の思想は、抑圧への抵抗のための連帯としての"Love"であり、戦争を行う政府への抵抗、革命を目指した"Peace"というラディカルなものだと思う。
ジョンも、ポップミュージックという装いの下に、ラディカルな前衛芸術家、革命家(ラディカルではない前衛芸術家、革命家というのもいないと思うけれど)の素顔が見える。ラディカルな部分とポップミュージックという部分を併せ持っているところがいい。
例えば、"Imagine"の歌詞の一部を引用しようと思う。和訳は、私自身の私訳である。

Imagine there's no countries
It isn't hard to do
Nothing to kill or die for
And no religion too
Imagine all the people
Living life in peace

You may say I'm a dreamer
But I'm not the only one
I hope someday you'll join us
And the world will be as one

Imagine no possessions
I wonder if you can
No need for greed or hunger
A brotherhood of man
Imagine all the people
Sharing all the world

国がない世界を想像してごらん
難しいことじゃないんだ
なにかのために殺したり死んだりすることもなく
そして宗教だってない
みんなが平和に生きる世界を想像してごらん

きみはぼくを夢想家だという
でもぼくだけじゃないんだ
いつかきみもぼくらといっしょになって
世界はひとつになることを

所有ということがない世界を想像してごらん
強欲になったり飢える必要もなく
同胞意識を持って
みんなが共有している世界を想像してごらん

国も所有も宗教もない世界を信じる仲間になることを勧めている。これは、甘い平和主義の歌ではなく、過激なアナーキズムへのオルグの歌だと思う。
ジョンがFBIにマークされていたという噂があるが、ラディカルな彼にとっては、当然のことでもあり、一種の勲章でもあると思う。
日本で「平和教育」に"Imagine"を聴かせているという話を耳にすることがある。もし、生徒が、平和を実現するためには、まずは日本政府を打倒して、キリスト教イスラム教も禁止すべきだ、そのためにみな連帯して立ち上がれ、と言い出したらどうするのだろうか。
ポップミュージックでそんな扇動をしているジョンの過激さがいいと思う。しかし、それが伝わっているのか心許なく思う。