理想のコーチング

つれあいと一緒にゴルフスクールに通うようになって、一年半少々が経った。それなりに上達したように思う。もちろん、定期的に練習をするという習慣をつけることも重要だけれども、担当のコーチのコーチングの方法もいいと思う。前のエントリーで、仕事の上で人を育てることの難しさについて書いたけれど(id:yagian:20110723:1311380752)、私たちのコーチは人を育てるのが上手く、参考になるところが多い。
プロのゴルフのコーチだから、スイングの理論があり、理想のスイングのイメージを持っている(ようだ。私たちはまだその全貌は理解できないけれど)。ただし、その理想のスイングは固定的なフォームではなく、いくつかの原則から構成されているようである。
例えば、パター、アプローチからドライバーまで、基本的には同じイメージ、メカニズムでスイングすべきだ、といったことだ。コーチによれば、シングルの人でもアプローチは他のクラブと違う独特のスイングをして、それでうまくやっている人もいるという。しかし、それよりは、すべてのクラブで同じスイングをした方が、シンプルでより成功の確率の高いスイングを習得する近道だという。
固定的なフォームが理想像ではないから、完成形としてのフォームは個人ごとに違っている。アドバイスするときに、これは必ず守らなければならないことと、この部分はそれぞれの個性でよいことと区別している。例えば、フィニッシュの形は、個性の領域に入っている。
また、最終完成形のスイングを示して、一気にそれを実現するように修正点を指摘するという方法はとらない。コーチの頭の中には、理想のスイングを実現するためのプロセスがあり、ステップ・バイ・ステップで練習を進めていく。最初は、最終完成形のスイングとは違っているけれども、そこを通過しなければならない課題をだす。
例えば、いちばん初心者の時は、振り子のようにスイングをすることを覚えるために、腕を伸ばして身体の回転と同調させて振ることを意識させる。それができるようになると、コックとか身体の右側に振り下ろすことを意識するといった課題が示される。
ステップアップすると、以前はこう教えていたけれど、そのことをマスターした今は、こっちのことを意識するようにしてください、という言い方をする。一見矛盾していることを教えているように見えるけれど、それが通過すべきステップだったことを説明してくれる。
ステップ・バイ・ステップの指導法と関連するけれど、同時にいくつもの課題を与えることはない。基本的には一回に一つ、多くて二つぐらいである。それを消化できるようになると、また、次の課題を一つ与える、という調子である。
だから、スクールでも、それほどアドバイスをする訳ではない。一回のクラスで、一回か二回ぐらいアドバイス、しかも、かなりポイントを絞ったものをして、あとは自分でその課題を考えながら練習をする。
細かくスイングを直されても消化しきれないし、ひとつひとつマスターしていく方が、一見迂遠な道のようであっても、結果的には近道だということがだんだんわかってきた。
これまでは、とにかく脱力することが課題だった。いまは、腕は完全に脱力することには変りないけれど、「振る」という意識を持つこと、しっかりと身体をねじって一気に回転させることが課題になっている。
さて、最後に、私たちのコーチのコーチングについて簡単にまとめておこうと思う。もちろん、あらゆるシチュエーションに当てはまるわけではないけれど、参考になるところは多い。

    • 目標となる理想像は固定的なものではなく、原理原則から構成されている。
    • 原理原則を守っていさえすれば、その他の部分は個性に委ねる。原理原則と個性は明確に区別する。
    • 理想とする原理原則の習得のために、ステップ・バイ・ステップのプロセスがあり、一気に理想を実現しようとはしない。
    • 同時に意識させる課題は一つか二つ。多すぎる課題を同時に与えることはしない。
    • アドバイスをしすぎない。課題を与えて、あとは、自分で考えて、練習をすることに任せる。