セミの声と日本社会アレルギー

今年の夏休みはハワイのカウアイ島に行ってきた。
今回の旅行のメインテーマは、海外でゴルフをやってみようということだった。キャディバッグを持った旅行は初めてだったので、なるべく移動をしない滞在型にしようということで、ハワイのリゾートを選んだ。
ハワイの気候が大好きで、今回で5回目の旅行になる。オアフ島マウイ島ハワイ島は行ったことがあったので、今回はカウアイ島にした。
リゾートホテルに泊まったので不便なことはなかったけれど、カウアイ島自体は鄙びた島で、ブランドショップが並んだモールなどはない。町もアメリカの田舎町そのもので、さほど観光開発も進んでいない。
島の東側には山塊が海まで迫っていて島を一周する自動車道がない。東北部の海岸、ナ・パリ・コーストは、ジュラシック・パークの撮影をした雄大な岸壁と渓谷になっているが、自動車でアプローチすることができない。船かヘリコプターかトレッキングかシーカヤックで見に行くことになる。私たち家族は、半日のクルーズでナ・パリ・コーストに行ったけれど、途中でイルカの群れにも会うことができて十分楽しむことができた。
もう一つの名所がワイメア渓谷である。ここは、自動車で展望台まで行くことができる。カウアイ島はハワイ諸島ではいちばん古い島で、火山活動が停止してからの期間が長い。一方、ハワイ島はいちばん新しい島で、まさに活発に噴火している。カウアイ島は火山性の地形の侵食が進んでおり、ワイメア渓谷は幾重にも渓谷が折り重なって複雑な地形がつくりあげられている。
カウアイ島では、観光するところはこの二か所ぐらいで、あとは、ビーチかホテルでのんびり過ごすか、ゴルフをするかぐらいしかすることがない。
カウアイ・ラグーン・ゴルフクラブというコースで、二回ラウンドをした。海岸の美しいコースで、いままでゴルフをしたなかでいちばん楽しかった。日本で言えばハイシーズンなのだろうけれど、それほど混んでおらず、ツーサムで前後のパーティとの間にも余裕があった。はじめは一回だけラウンドをする予定だったけれど、あまりに気持ちよかったので、翌日ももう一回ラウンドをしてしまった。
コースはきれいに整備されているけれど、カジュアルな感じであまり格式ばっていなくて、従業員のひとものんびりしているけれど、しかし、細かいところまで気がついてくれて気持ちがよかった。
夏休みにはたいてい海外に旅行をしているけれど、毎回、日本から外に出るとほっとして、日本に帰ってくると息苦しくなる。
ハワイアン・エアラインでカウアイ島の空港についた時、バゲージクレームでは乗客たちはみなのんびりした感じで荷物がでてくるのを待っていた。レンタカーのオフィスでも、あまりてきぱきと受付が進んでいかなかったけれど、特に気にする様子もなくのんびりと並んで待っていた。
羽田空港に戻ってきた時、少しでも列の短い入国審査の窓口に並ぼうと走っている人がいて、ちょっと驚いた。それほど大行列しているわけでもなく、どうせチェックインした荷物が出てくるのを待つことになる。バゲージクレームで荷物を待つ人たちもどこかカリカリしていて、身を乗り出すようにして自分の荷物を探していた。
カウアイ島に比べるとちょっと酸素の濃度が低いような気がした。
どの国でもその国の暗黙の掟があって、それぞれの国に住む人をしばっているのだと思う。私は日本に暮らしているから日本の暗黙の掟には精通していて、外国の暗黙の掟にはあまり気がついていいないのだと思う。しかし、それを割り引いても、日本は暗黙の掟が息苦しい国なのではないかと感じている。
日常、なるべく暗黙の掟は気にしないように、適当に掟破りをしながら暮らしているし、どちらかと言えば暗黙の掟にしばられていない方だとは思う。それでも、日本に暮らしているとどうにも息苦しくなって、海外に行きたくなる。
海外旅行をすると、いつも暮らしている環境のなかにあるアレルゲンと接しないようになって、アレルギーの症状がおさまることがある。私にとっては日本社会のアレルゲンを身体から抜いてアレルギーの症状を抑えるために海外に旅行している。
今、東京でこのウェブログを書いている。海外では聴くことのないセミの声が聴こえている。また、来年の夏まで日本社会アレルギーをだましだまししながら暮らさなければならない。
ホテルのバーで海を見ながらビールを飲み、自分はいつまで日本社会アレルギーに耐えることができるのだろうかとぼんやり考えていた。