おいしいアメリカ:オーガニックとクラフトビールとコーヒー

おいしいアメリ

夏休みのハワイ旅行で行ったレストランのなかでは、マウイ島の北側、パイアのほど近くにある"Mama's Fish House"が印象に残った。料理もおいしく、立地もよく、ホスピタリティもすばらしかった。

www.mamasfishhouse.com

身近にアメリカの良さを共有できる人が少ないいこともあり、「まずい」という強固なステレオタイプがあるアメリカの食のおいしさについて共感してもらうことがなかなか難しい。

しかし、実際にアメリカに行くたびに「おいしいアメリカ」を堪能しているし、日本でもアメリカ的な食を楽しむことが増えている。

オーガニックとクラフト・ビールとコーヒー

1990年代の初頭、はじめてアメリカに行った時、アメリカの食が一般的においしいとは言えなかった。個人的には、ダイナーの端が焦げたパンケーキと薄いコーヒーは好きだけれども、積極的に他人には勧められない。

しかし、徐々に改善が進み、特に2010年代に入ってからは劇的な変化があったと感じている。この変化を代表するのが、オーガニック、クラフト・ビール、コーヒーの3つだと思う。

ハワイにも、オーガニックを中心として全米展開する食品スーパーマーケットWhole Foods Marketがあり、地元のDown to EarthやMana Foodsという人気店もある。これらの店では、健康や環境配慮だけではなく、おいしさも追求されている。Farm to Tableを標榜するレストランも多く、”Mama's Fish House”では、魚を採った漁師さんの名前が書かれたメニューもあった。

最近、どの州でもクラフト・ビールを作るマイクロ・ブリュワリーがあり、多くの地元のレストランに置いてある。もともとアメリカの料理は、味が濃くてビールとの相性がよいものが多い印象があるが、ビールの選択肢が増え、ビールと食を組み合わせる楽しみが一気に増えた。ビールは鮮度がよい方がおいしい「生鮮食品」だから、大規模なビールメーカーより地産地消に向いていると思う。

そして、町のそこかしこに、おいしいコーヒーを出してくれるインディペンデントのカフェが普通にあるようになった。いわゆるサードウェーブコーヒーは、大企業が仕掛けた一時的な流行ではなく、地に足がついたものだと思う。

ヒッピー文化と多様性

オーガニック、地産地消クラフトビール、サードウェーブコーヒーといった最近のアメリカの食の傾向には、やはりヒッピー文化が底流にあると思う。個人的には、ヒッピー文化にはあまり惹かれないけれど、今のおいしいアメリカは、彼らの文化抜きではありえなかったことは間違いない。

たまに、アメリカのさまざまな起業家へインタビューするポッドキャスト"How I Built This"を聞くことがある。起業家の中で、ヒッピーの両親に育てられた、とか、コミューン育ち、とか、かなり特色のある環境で生まれ育った人たちがいて、彼ら自身はヒッピーではないとしても、その個性ある感覚、世界観、人脈を生かして、特色あるビジネスを立ち上げていたりする。

www.npr.org

多様性の価値、というのはこういうことなのだ、と思う。

おいしいアメリカと階級

Whole Food Marketは高級スーパーという位置づけで、そこで売られているオーガニック食品は高くて、ウォルマートとは客層が違っている。クラフトビールは、もちろん、バドワイザーより高いし、サードウェーブのコーヒーは、ダンキン・ドーナツより高い。

前回のブログで、英語の能力とカースト・階級差を感じるということを書いたけれど、最近の「おいしいアメリカ」も、ある一定の階級以上が享受している、という印象はある。