バルト「物語の構造分析」に続いてレヴィ=ストロース「野生の思考」を読み始めている。
「野生の思考」のなかで、本質的なところではないけれど、気になった一節があったからいつものように引用したい。
呪術的思考とは「因果律の主題による巨大な変奏曲」なのであって、それが科学と異なる点は、因果性についての無知ないしその軽視ではなく、むしろ逆に、呪術的思考において因果性追究の欲求がより激しく強硬なことであって、科学の方からは、せいぜいそれを行きすぎとか性急とか呼びうるにすぎないのではなかろうか?
呪術的思考は過剰に因果性をより追究してしまう。陰謀論者の思考はこのような呪術的思考と似ていると思う。陰謀論者は「偶然」に耐えられず、過剰に因果性を追究するあまりに、「陰謀」を妄想してしまう。
例えば、アメリカ政府の政策は、多様な利害関係者の力がせめぎあう複雑な政治過程を経て決定される。それは、複雑すぎて単純な因果関係に還元して説明することはできない。しかし、陰謀論者はわかりやすい因果関係を求めてしまい、その背後にユダヤの陰謀を見いだしてしまう。それは、呪術的思考が病気の背後に呪いを見いだすのとよく似ている。
- 作者: ロラン・バルト,花輪光
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1979/11/15
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 55回
- この商品を含むブログ (83件) を見る
- 作者: クロード・レヴィ=ストロース,大橋保夫
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1976/03/30
- メディア: 単行本
- 購入: 8人 クリック: 88回
- この商品を含むブログ (141件) を見る