江戸時代のトリビア

もうすっかり夏の天気になった。家中の窓を開け放つと、吹き抜ける風が心地よい。
ごろごろしながら「伊沢蘭軒」を読み進めている。気候のためか、病気のためか、「伊沢蘭軒」という作品のためか、2時間も続けて読むと、集中力が切れてしまう。読書の進捗状況を当ウェブログの右下のグラフに示してある。まだ四分の一も読み進んでいない。読み終わるまでには当分かかりそうである。そもそも読み終えられるのか、あまり自信がない。
さて、今日も「伊沢蘭軒」のなかで気に留まった江戸時代のトリビアを紹介したい。

……この秋は雨のために酒の舟が入らなかった。「今歳夏秋之際、霖雨数月、酒船不漕港、以故都下酒価頗貴。」と云うのである。武江年表を検するに、閏六月より八月に至るまで雨が多く、七月二十五日の下に「酒船入津絶えて市中酒なし」と書してある。(p160)

伊沢蘭軒は、「今年の夏から秋にかけて雨が続き、酒船が港に入らず、都下の酒価は非常に上がった」と書いている。
蘭軒がこれを書いた文化五年、1808年の頃の江戸は、酒を上方からの移入に頼ることができるようになっていた程度に舟運、物流が発達していたが、その舟運、物流は、時に、市中の酒が高騰することがある程度の信頼性しかなかった、ということがわかる。
これが奢侈品である酒だからよいが、米などが数ヶ月舟運が滞ったらずいぶん大変なことになっただろうと思う。

森鴎外全集〈7〉伊沢蘭軒 上 (ちくま文庫)

森鴎外全集〈7〉伊沢蘭軒 上 (ちくま文庫)