とろけるような甘さ

最近読んだ本は、仕事のための勉強用のものが主で、読書のための読書ではなく、何かの役に立てようと思って読むものばかりだった。
勉強用の本といっても、なかなか興味深い本が多く、それはそれで楽しい読書ではあるけれど、うるおいには欠ける。
気分転換に、おもいきりうるおいのある読書をしようと思い、山田詠美の恋愛小説集「風味絶佳」を読んだ。
仕事用の読書のせいで、心が固くなっていたのか、最初は、うまく山田詠美の世界に入っていけなかったけれど、最後の「春眠」を読む頃には主人公に自分を重ねながら読んでいた。
山田詠美の小説にでてくる男女の関係は、とろけそうに甘い。
ほんとうは、自分もその甘さが好きだが、その甘さを好きだということを人に知られるのが恥ずかしく思う。山田詠美の小説の感想を書こうと思うと、その甘さを避けるわけにはいかない。だから、感想を書く筆はなかなか進まなくなる。
しかし、山田詠美の小説を読んでいると、小説に書かれた甘さを想像するだけでは満足できず、自分自身がその甘さをたっぷりと味わいたくなることを告白しないわけにはいかない。

風味絶佳 (文春文庫)

風味絶佳 (文春文庫)