南場智子「不格好経営」
最近、中間管理職をやっていることもあり、仕事の体験談が書かれた自己啓発系の本を読んで「そうだよなぁ」とか「すごいなぁ」とか「オレもまだまだ」などと思う典型的な中年「サラリーマン」になっている。
DeNAの創業者南場智子の本「不格好経営」を読み、やっぱり「そうだよなぁ」とか「すごいなぁ」とか「オレもまだまだ」とか思いながらページの隅をたくさん折った。
気になった言葉を引用していこうと思う。
- 組織と個人
同じ目標に向かって全力を尽くし、達成した時のこの喜びと高揚感をDeNAの経営の中枢に据えよう。お互いに切磋琢磨し、ときに激しく競争しても、チームのゴールを達成したときの喜びが全員に共有され、その力強い高揚感でシンプルにドライブされる組織を作ろう。
(p46)
バラバラな個性や才能が集まって、またこうして離れていくこともある。寂しいことだけれど、自分の人生の選択は堂々としてほしい。そして、個人にとっても、会社にとっても、一緒に仕事をしたことが次の発展に活きるならば嬉しいことだ。
(p229)
1 全員が主役と感じ、ひとりひとりが仕事や成果にオーナーシップを感じるようなチームの組成、仕事の単位となっているか。
2 チームの目標はわかりやすく、そして高揚するに足る十分高い目標となっているか。
3 チームに思い切った権限移譲をしているか。信じて任せているか。
「オーナーシップ」、喜び、高揚感、信頼といったことが人間の能力を高める上でもっとも重要な点だと思う。「バラバラな個性や才能」を集め、各自が能力を発揮できる場を提供すること、これがleaderの責任だ。きわめて難しいことだけれども。
- 成長
「失敗は成功のジャンプ台」と捉えているわが社では、結果としての失敗が減点になることはない。大事なのは、失敗に至るプロセスだ。大塚の場合、作戦の練り方、実行の徹底ぶりはどれも極めて高いレベルだと評価され、社運をかけたソーシャルゲーム立ち上げのプロジェクトに抜擢されたのだ。
(p143)
このようなことはどの組織でも語られていると思う。しかし、実践されていないことが多いだろう。そうあるべきことを実際にやり抜けるか、それが問題である。
- 意思決定
意思決定については、緊急でない事案も含め、「継続討議」にしないということが極めて重要だ。…継続討議はとても甘くてらくちんな逃げ場である。決定には勇気がいり、迷うことも多い。もっと情報を集めて決めよう、とやってしまいたくなる。…こうしたことが、動きの速いこの業界では致命的になることも多い。だから、「決定的な重要情報」が欠落していない場合は、迷ってもその場で決める。
「決定的な重要情報」が欠落しがちな起案者は優秀ではない。そのようなケースはDeNAでは少ないが、それを回避することにも気を使った。事案は決定の場で初めて経営トップに説明されるわけではなく、その前に「頭出し」として、報告を受けることが多い。そのときに、意思決定にはどのような情報がポイントとなるか、おおまかにすり合わせておくことだ。
(p198)
意思決定のプロセスを論理的に行うのは悪いことではない。でもそのプロセスを皆とシェアして、決定の迷いを見せることがチームの突破力を極端に弱めることがあるのだ。
検討に巻き込むメンバーは一定人数必要だが、決定したプランを実行チーム全員に話すときは、これしかない、いける、という信念を全面に出したほうがよい。…
…不完全な情報に基づく迅速な意思決定が、充実しが情報に基づくゆっくりとした意思決定に数段勝ることも身をもって学んだ。
(p204)
事業リーダーにとって、「正しい選択肢を選ぶ」ことは当然重要だが、それと同等以上に「選んだ選択肢を正しくする」ということが重要となる。決めるときも、実行するときも、リーダーに最も求められるのは胆力ではないだろうか。
(p205)
特に最後の引用については強く同意する。
「迷う」ということは、それぞれの選択肢はさほど悪い選択ではないのだろう。そうであれば、「何を選択するか」ということよりも、「その選択をやりきる」ということの方がはるかに重要な場合が多いはずだ。
着手することで、事前検討に比べ質量ともに圧倒的な情報を得ることができる。その時点で選択が誤っていることが明確になったら方針転換すればよい。
と言っても事前検討の重要性が小さいわけではない。「決定的な重要情報」が何かを見極め、信頼にたる情報は収集する必要はある。そのために短期間であっても、集中して情報を収集し、考えぬかなければならない。
- 作者: 南場智子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2013/06/11
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