考証

Immanuel Wallerstein「近代世界システムI 農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立」の要約

Immanuel Wallerstein「近代世界システムI」を読み始めた。それなりに、事前の準備の読書はしたつもりだったけれど、Europeの歴史に関する予備知識が不足してうまく理解できないところも多い。今は、ざっくり大筋を押さえて、細部の歴史について理解できるよ…

捕鯨、漂流、近代世界システム

テレビをザッピングしていたら、NHK-BSで「最強の戦国武将は誰か」というテーマの番組をやっていた。せっかく「戦国時代」というおいしい時代を取り上げるのに、いいかげんこういう切り取り方をするのはやめればいいのに、と思ったのでチャンネルを変えた。 …

ポルトガル、ベナン、コンゴ、安土桃山ー文化の三角測量

しばらく前に読んだ川田順造「「悲しき熱帯」の記憶 レヴィ=ストロースから50年」のなかで印象的だった部分を紹介したい。 話題は、大航海時代のポルトガルの影響である。日本の歴史のなかでもポルトガルの来航、鉄砲とキリスト教の伝来は、戦国時代を終結…

日本近代文学の黄金時代と日本近代散文の成立

水村美苗は「日本語が亡びるとき」で次のように書いて、かなり批判された。 …それは、日本に日本近代文学があった奇跡を奇跡と命名する勇気を私についに与えてくれた。だが、そお奇跡はそのまま喜びに通ぜず、その奇跡を思えば思うほど、ふだんからの悪癖に…

日本は民主主義国家なのか

日本は本当に民主主義国なのだろうか。 形式的に言えば、日本には憲法があり、憲法に規定された議会があり、国会議員は国民が選挙で選び、議会の多数派から総理大臣が選ばれ、与党から大臣を選び、大臣が官庁をコントロールする、という制度になっている。国…

「原子力村」の解体

吉岡斉「原子力の社会史」 吉岡斉「原子力の社会史」という本を読んだ。科学史家がまとめた日本の原子力開発の詳細な歴史である。実に興味深く、勉強になる。残念なことに絶版になっており、図書館で予約してようやく借りることができた。 もんじゅの事故と…

「植民地文学」としての日本文学

読書の記録をしようと思い、読書メーター(http://goo.gl/ZsAG)を使っている。 読書メーターを通じて、私がフーコーを何冊か読んでいることを知った大学院生からメッセージが届いた。英文学を専攻している大学院生で、これからフーコーに挑戦しようとしていと…

建国神話と天皇タブー

今谷明「室町の王権」を読んだ。 足利義満が天皇家から権力、権威を奪取しようとしていたという仮説について書かれた本である。室町時代についてはあまりよく知らなかったから、いろいろと勉強になった。 足利義満という人物は、天皇家に取って代わろうとし…

未知との遭遇

英語版のウェブログ(http://goo.gl/RAHps)で書いたネタだったんだけど、けっこう評判がよかったので和訳を再掲しようと思う。 最近、冗談でインターネット以前の時代を「石器時代」と呼んでいる。石器時代人である私の世代と鉄器時代人の若い世代のインター…

日本の仏教のルーツ

今日、叔父の一周忌があった。久しぶりに親戚が集まった。不謹慎かもしれないけれど、なかなか親戚が集まることがなく、いい機会だったと思う。亡くなった叔父さんが皆を集めてくれたのだと思う。 真言宗のお寺で、法要があった。お坊さんは、あるときは梵語…

幕末の日本語学習

アーネスト・サトウ「一外交官の見た明治維新」を読んでいる。実に面白い。 アーネスト・サトウは、初代の英語と日本語の通訳者である。彼が通訳者になったときには、イギリスには日本語を話せる人はほとんどいなかったし、また、日本には英語を話せる人がほ…

中国の盗賊と日本の雑兵

高島俊男「中国の大盗賊・完全版」を再読した。稲本が推薦しているように(id:yinamoto:20100302:p1)、実におもしろい本で、中国を理解するためには欠かせない本のひとつだと思う。 本書のいちばんスリリングな部分は、もちろん、毛沢東による中華人民共和国…

幕末の英語通詞の数奇な運命

佐野真由子「オールコックの江戸」を読んだ。幕末に着任した初代駐日公使オールコックの駐日時代の事跡に関する本である。そのなかに、しばらく前に読んだ岩尾龍太郎「幕末のロビンソン」(id:yagian:20110107:1294350917)に登場した人物が顔をだしている。通…

創られた伝統としての「演歌」

エリック・ホブズボウムが「創られた伝統」 で明らかにしたように、古い歴史を持つと思われている「伝統」の多くは近代に創造されたものである。 輪島裕介「創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史」は、ボブズボウムの手法を日本の「伝統…

幕末のロビンソン・クルーソーとしての吉田松陰

岩尾龍太郎「幕末のロビンソン―開国前後の太平洋漂流(ロビンソン・クルーソー・ゲーム)」を読んだ。同じ作者の「江戸時代のロビンソン―七つの漂流」の続編である。(id:yagian: 20101229:1293615566) この本では、海外から外交関係を持つように強制されるよ…

過去の世界の復元としての歴史叙述

大学時代の同級生の稲本と会社の後輩だった入江くんが、私のウェブログで感想を書いた二冊の本について取り上げてくれている。 一冊目は、磯田道史「武士の家計簿」。 id:yagian:20101008:1286487450 id:yinamoto:20101025 http://hirie.sakura.ne.jp/2010/1…

世の無常

島崎藤村「夜明け前」を読み終わった。 改めて書く必要はないかもしれないけれど、「夜明け前」は幕末から明治のはじめにかけて生きた島崎藤村の父親、島崎正樹をモデルとした歴史小説だ。 話は黒船来航から始まる。木曽街道の宿場町、馬籠の本陣の息子とし…

リーバイスの考証

うつで元気がないときは、耳元の音がうるさく感じられて、しばらくiPodを聞いていなかった。今日は久しぶりにiPodを付けて通勤をした。これも回復のひとつの印だと、うれしく思う。 今日は、音楽ではなく、英語学習用のポッドキャスト(English as a Second L…