雑感

「石橋湛山評論集」を読んで

「石橋湛山評論集」を読んだ。 大正から戦後にかけての彼の評論が収録されている。改めて書くこともないが、確かに石橋湛山の主張は大正期から戦後まで一貫している。 大正時代から、彼は一貫して朝鮮、台湾、満州の植民地を放棄すべきとの小日本主義を主張…

日本と保守主義

東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故以来、民主主義ということについて断続的に考えている。その一環として、エドマンド・バーク「フランス革命の省察」を読んだ。今日はその感想について書きたいと思う。 これも以前から何回か書いているけれど、私の…

体調管理

このウェブログを「うつ」のタグで検索して読み返してみると、最悪の時期と比べればいまはずいぶんいい状態になってきたのだなと改めて思う( http://d.hatena.ne.jp/yagian/archive?word=%2A%5B%A4%A6%A4%C4%5D&of=50)。 自分がうつ病だと自覚したのが2007年…

竹森俊平「国策民営の罠」

竹森俊平「国策民営の罠」を読んだ。 竹森俊平は「世界デフレは三度来る」を読んで以来(id:yagian:20080917:1221647196)、まっとうな学者だなと思い、基本的には信頼している。この「国策民営の罠」は、福島第一原子力発電所の事故に際して、なぜこのような…

今も昔も

太平洋戦争で日本が無差別爆撃された理由を知りたくてAmazonから何冊か本を取り寄せた。そのうちの一冊のジョン・ダワー「容赦なき戦争」を読み終わった。正直に言って、重い気持ちになった。 この本で、ジョン・ダワーは太平洋戦争を「人種差別」という観点…

暗い話を聞きたいが 笑って聞いていいのかな

以前もこのテーマについて書いたことがあるけれど、うつ病の人に「がんばれ」と言ってはいけないとよく聞く。 うつ病者としての私の立場から言えば、「がんばれ」という言葉をかけてくれる人は元気づけようを思って言ってくれているということはよくわかるか…

「市場の倫理 統治の倫理」

1. ジェイン・ジェイコブス「市場の倫理 統治の倫理」 ジェイン・ジェイコブス「市場の倫理 統治の倫理」を読了した。 3.11以降、民主主義について考えて続けているけれど、いろいろと示唆に富む内容だった。 この本のエッセンスを強引に要約するとこんな風…

「市場原理主義」と日本

最近、仕事が忙しくてなかなかウェブログを更新することができない。 昨日の金曜日の夜、久しぶりに大学時代の友人と飲み、カラオケに行き、午前様になった。「午前中」はゴロゴロと寝て過ごし、午後は久しぶりにまとまった時間、集中して本を読んでいた。そ…

日本はなぜ無差別爆撃されたのか

NHKで東京大空襲を振り返る番組をやっていた。 客観的に見て、一般市民の大量殺害を企図した作戦を立案し、住宅地を爆撃したという意味では、東京大空襲と広島長崎への原爆投下は、戦争の歴史を振り返っても空前絶後の残虐な行為だと思う。 日本軍による残虐…

ブラック・スワン、リーマン・ショック、福島第一原子力発電所事故

今日のテーマの「ブラック・スワン」といっても映画の方ではなく、きわめて稀に起こる事象の方である。 かつて「金融工学」が非常に話題を集めた時期があった。リーマン・ショック以降あまりこの言葉を耳にしない。もちろん、話題にならないということだけで…

自民党政権下の逆説明責任体制

斉藤淳「自民党長期政権の政治経済学 利益誘導政治の自己矛盾」を読んだ。 斉藤淳は、衆議院補欠選挙に民主党から立候補し、一年間だけ国会議員を務め、その後の選挙で落選した。もともとは政治学の研究者であり、現在、イェール大学の政治学の助教授である…

プロとしての意識:イチロー、松井秀喜、ダルビッシュ有

悪口を書き出すと止まらなくなってしまうという人が何人かいて、司馬遼太郎とか坂本龍馬ファンを公言する人とか(司馬遼太郎や坂本龍馬本人には恨みはないけれど)、塩野七生とか(塩野七生は本人が勘違いしているように思う)、あと、イチローとか。 以前に…

一見は百聞に如かず(続):石原莞爾「世界最終戦論・戦争史大観」

「一見は百聞に如かず:石原莞爾「世界最終戦論」」(id:yagian:20120225:1330169639)で、石原莞爾の主張が意外とまともであることについて書いた。今日は、具体的に引用をしてみようと思う。 統制は各兵、各部隊に明確なる任務を与え、かつその自由活動を容…

木村政彦はなぜ力道山に敗れたのか

増田俊也「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」読了。701ページ、二段組の大作である(これで2,600円という価格はあまりにも安いと思う)。丹念な取材でこれまで「通説」とされてきた事実を覆す力作で、非常に興味深かった。しかし、一方で、読み進むう…

百聞は一見に如かず:石原莞爾「世界最終戦論」

最近、青空文庫や岩波文庫で戦前の左翼の人たちの本を読んでいたのだが、それでは片手落ちだと思い、戦前の右翼の人の本も読もうと思って石原莞爾を読んでみた。 以前、北一輝「日本改造法案大綱」を読んで、読みにくいなと思った記憶があり、石原莞爾はどん…

「わたしを離さないで」と「1Q84」

本も映画も意欲が亢進して続けざまに読んだり、観たりする時期があり、しばらく手に取らない時期もある。最近は、映画熱が高まっていて、週末にTSUTAYAで2本ほど映画を借りるのが恒例になっている。ここしばらく気にはなっていたものの見逃した映画がたくさ…

ノルウェイの森と続崖の上のポニョ

ノルウェイの森:自殺した親友の精神的に不安定な彼女を抱えた僕の前に魅力的な緑ちゃんが現れた。僕はどうすればよいのか。 続崖の上のポニョ:彼なしでは生きることができないさかなの子供のポニョを抱えた宗介の前に魅力的な緑ちゃんが現れた。宗介はどう…

哲学なき国:「一身独立して一国独立すること」

最近、不眠症が治ったのか、早朝に目がさめることがなくなった。いままで早朝にウェブログを書いていたけれど、それができなくなったので、なかなか更新がままならなくなってきた。週末に更新するのが精一杯かも。 さて、いま、明治初期の自由民権運動から戦…

言語習得のプロセスについて考えてみた

しばらく前に書いた記事「パターン認識、校正、速読術、音読と黙読、ロゴス中心主義、声に出す日本語、黙読における文章のリズム、漢字の認識の限界とは」(id:yagian:20120119:1326972915)とそれについたコメントの続編なので、一応、目を通してもらえるとう…

錦織圭と石川遼

この前、地上波があまりにつまらないので、スカパー!HDに入会した。今はお試し期間で、すべてのチャンネルを見ることができる。 ちょうどテニスのオーストラリアン・オープンの時期で、WOWWOWでは朝から晩まで中継をしている。最近はあまりテニスの中継を見…

パターン認識、校正、速読術、音読と黙読、ロゴス中心主義、声に出す日本語、黙読における文章のリズム、漢字の認識の限界とは

今日もfacebookの知り合いから教えてもらったネタ。 とりあえず、この画像を見て、枠内の文章を読んでいただきたい。 http://ameblo.jp/hugjapan/image-11137684798-11738727368.html どうだったろうか。 私の場合、最初に読んだ時には、単語がアナグラムに…

「坂本龍馬」の虚像と実像

先日、Facebookで会社の知り合いが紹介していたウェブ上のコラム「これからの未来:現代の黒船の到来、あなたは坂本龍馬に憧れますか? --- 谷本 貫造」(http://goo.gl/f4UWJ)を読んでいて、内容にまったく無関係の坂本龍馬が引合に出されていて、これだから…

結局「ロリ」か「ヨサコイ」

地上波のテレビがあまりにつまらないので、最近はもっぱらNHK-BSで海外のニュース、ドキュメンタリー、スポーツ、ネイチャー番組を見ている。しかし、NHK-BSでも見るべき番組を放送してないときもある。そんな訳で、スカパー!HDと契約することにした。昨日…

「学問のすすめ」のすすめ

年末にAUのガラパゴス携帯をiPhoneに買い換えた。 主に使っているのは通勤中だけど、電波が途切れる地下鉄通勤なので十分活用しているとは言えない。 今まで、通勤中はiPod ClassicでPodcastを見るか音楽を聴くかしていたけれど、iPhoneになってPodcastの画…

反グローバリズムってなんだろう

誰が言っていたのかわすれてしまったけれど、なにかよくわからないことを理解するためには本を書いてみるのがいい、という意味のことを読んだことがある。その人と比較するのはおこがましいけれど、なにかよくわからないことがあったとき、とりあえずウェブ…

ワークパッケージ、ユーザーストーリー、チケットの粒度に関する天啓について

思いついたことを忘れないうちに備忘的に書いておこうと思う。 WBSを作るときに、どの粒度で作るべきか迷うことが多い。教科書的にな本を読んでも、ある程度の目安を示しているけれども、結局はプロジェクトの特性に依存する、ということになっている。し…

アラブの春、ロシアの春:民主主義の実験室

昨年、チュニジアに端を発したアラブ諸国の独裁政権への抵抗運動、下院議員選挙での不正の暴露をきっかけにしたロシアの反プーチンのデモなど1960年代後半の世界的な学生運動の広がりを思い起こさせるような民主化への活動が国際的に拡大している。 チュニジ…

2011年を振り返る

大晦日なので、月並みだけれども、今年一年を振り返ってみようと思う。社会、仕事、趣味の三つのテーマで書いてみようと思う。 社会 私にとって、今年の「社会」の領域では、やはり3.11とそれに続く福島第二原子力発電所の事故がいちばんインパクトが大きか…

ラディカルな会議

「ラディカル(radical)」という言葉は、「過激」という意味に使われることが多いけれども、もともとの意味は「根源的」という意味だという。 「過激」を気取っている人には嫌悪感を感じるけれど、ものごとを「根源的」に考えるあまりに意図せず「過激」にな…

市場という海に浮かぶ企業という島と市場メカニズムを使ったプロジェクトマネジメントに関する試案

ロナルド・H・コース「企業・市場・法」という本を読んでいる。 内容もいいのだけれども、なんといってもコースという人の問題設定のセンスがすばらしい。市場メカニズムのなかで、なぜ、企業という組織体が存在するのか、という問題について考察している。 …