雑感

原典にあたる必要性:「冷温停止状態」と原子力安全委員会

野田首相が福島第一原子力発電所の「冷温停止状態」を宣言したというニュースを見た(「首相、原発事故収束を宣言 「冷温停止状態を確認」」朝日新聞ウェブサイト 2011年12月16日23時59分(http://goo.gl/qYJkz))。 「冷温停止状態」という用語については、専…

これがマルキストの生きる道

アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート「マルチチュード」を読んだ。おもしろかった。 アントニオ・ネグリは、現代において最大の影響力を持っているマルキストだと思う。私自身は、ハイエクに共感する保守主義者だけれども、マルクスは19世紀最大の思想家…

教えることと教えられること

最近、社内の勉強会でリーダーシップに関する報告を聞いた。 そのなかで、リーダーシップは「成果指向型」と「成長指向型」に大別できるという話があった。 「成果指向型」は最良の成果を求めるリーダーシップで、極論すれば人に対しては興味をもたないタイ…

悲しき南洋

最近、よく眠れるのは健康上いいことだけれども、いつも早朝にウェブログを書いているので、なかなか新しい記事を書くことができない。 英語版(http://goo.gl/J3DhM)と日本語版を交互に書いていることにしている。最近ではずいぶん慣れてきたけれど、それで…

ポルトガル、ベナン、コンゴ、安土桃山ー文化の三角測量

しばらく前に読んだ川田順造「「悲しき熱帯」の記憶 レヴィ=ストロースから50年」のなかで印象的だった部分を紹介したい。 話題は、大航海時代のポルトガルの影響である。日本の歴史のなかでもポルトガルの来航、鉄砲とキリスト教の伝来は、戦国時代を終結…

フーコーと山口組

重田園江「ミシェル・フーコー」を読んだ。 フーコーの「監獄の誕生」を中心として、筆者のフーコー理解について述べた本である。新書版でさまざまな哲学者、思想家に関する入門書が出版されているが、この本は入門書という気持ちで読み始めると期待が裏切ら…

ミツバチと保守主義とピースミールエンジニアリング

ローワン・ジェイコブセン「ハチはなぜ大量死したのか」を読んだ。 この本は、アメリカで発生したミツバチが大量に失踪してしまう蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder、CCD)の原因を追求したサイエンス・ノンフィクションである。 日本でも、ミツバチ…

ヒップホップを楽しむことはできるのか

大和田俊之、長谷川町蔵「文化系のためのヒップホップ入門」を読んだ。 そもそも、ヒップホップに入門しようと思って本を読んでいる時点でダメダメなんだけど… この本は、アメリカ文学者の大和田俊之とヒップホップライターの長谷川町蔵の対談形式で進んでい…

秋山監督とセイバーメトリックス

今年の日本シリーズは、ソフトバンク・ホークスが4勝3敗で中日ドラゴンズに勝った。 これはどの人も指摘していると思うけれど、飛ばない(中村剛也のみ除く)統一球の採用のためか、投手優位のシリーズだった。特に、中日ドラゴンズはとにかく打てなかった。…

三人のカール、カール・マルクス、カール・マンハイム、カール・ポパー

最近、カール・マンハイム「イデオロギーとユートピア」、カール・ポパー「歴史主義の貧困」を読んだ。マンハイムは知識社会学の祖として、ポパーはハイエクの盟友として、また、まっとうな保守主義者として共感している。しかし、困ったことに(別に、ほん…

素直な大人

老人性早朝覚醒(ほんとうは、うつ病の睡眠障害だと思う)のため、休日でも早朝から起きている。 日曜7:00からフジテレビで「ボクらの時代」という三人で話をするトーク番組があり、出演者によって面白い話になることがあって、だいたい毎週見ている。今日は…

まともに考えよう:TPP交渉参加問題と民主主義

昨日の夜のTVニュースで経団連と全農の会長がTPP交渉への参加問題についてまったく噛み合わない会話をしている映像を見ていやな気持ちになった。 私自身はTPP参加がさほどの問題とも思わないし、さっさと参加すればいいと思っているから、立場としては経団連…

西洋近代思想についての個人的な覚書

今、カール・マンハイム「イデオロギーとユートピア」を読んでいる。 このなかで、マンハイムがイデオロギーという概念の歴史についてまとめており、その部分を読んでいたら、西洋近代思想についてもやもやしていたところが整理されたような気になったので、…

TPP交渉参加問題とサブガバメント(2)

朝、ゴルフスクールに行く前の時間、「サンデー・モーニング」という番組をぼんやり見ていたら、金子勝があんまりな暴論を吐いていたので、大宅映子が思わず割り込んでいた。 金子勝は、TPPの交渉に参加すると日本は必ずアメリカの交渉力に負けてアメリカに…

TPP交渉参加問題とサブガバメント

TPP交渉参加問題が取りざたされているけれど、論理的に交渉参加に反対する論拠がどこにあるのかよくわからない。 最近目にした議論でいちばん説得的だと思ったのは山崎元氏のこのツイートである。 @yamagen_jp: TPPについては、輸出のメリット、農業のデメ…

効率と教養

「ちきりんの日記」にアップロードされた「インプットか、それともアウトプットか」(http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20111030)を読み、感想を書いてみたいと思った。つまらなく、平凡な結論だけど、インプットもアウトプットも必要で、出口社長の方法もちき…

代償なしで手に入れられるものはない ―うつ病から手に入れたもの―

もともと英語のウェブログ( http://goo.gl/J3DhM )で書いた記事だけど、日本語でも伝える価値があるように思って和訳したもの(自分でだけど)をアップすることにした。翻訳したものだから、不思議な日本語になっているような気がする。 うつ病になって約4年…

手を抜いた!

言い訳はいくらでも並べられるけど、手を抜いたというのは事実だし、それはきちんと認識しないと。 昨日、新任のマネジャーに対する研修を半日受講した。そのなかの一つのクラスが私の部署の担当で、そこは自分が講師をすることになっていた。 要領がわから…

「賭けをして、そして、生き延びた 」村上春樹インタビュー和訳:エマ・ブロックス、ザ・ガーディアン

以前、村上春樹のカタルーニャ賞でのスピーチを英訳したところ(英語の品質には問題はあったけれど)好評だった。いまでもけっこうアクセスする人がいる(http://goo.gl/Gi2hH)。今度は「1Q84」の英訳が出版された機会に、英語の媒体(the Gurdian)に出た村上…

マネジャーの心得

これまで小規模なプロジェクトだったけれど、プロジェクトマネジャーはさんざんやってきたが、ラインのマネジャーになったのははじめてである。今、ちょうど3週間がたったところだけど、まだまだ新鮮な気分でエンジョイしている。 人間観察が好きで、人はど…

日本二在リテファンクヲ為ス

昨日、在日ファンク(http://goo.gl/q2HZI)のライブに行ってきた。堪能、とまではいかないけれど、楽しかった。 在日ファンクは、いわゆる「在日韓国人・朝鮮人」という意味ではなくて、「日本二在リテ」ファンクをするという意味で、メンバーは特に「在日」…

空気を読むより直接聞いてみろ

「空気を読む」をテーマに、ウェブログ("Reading the Air" http://goo.gl/Tuwkq 「浮遊感」id:yagian:20111010:1318222287 )に書いたり、ツイートしたり(「漢字、読めるけど、空気、よ・め・な・い。」 http://goo.gl/kOF17)したら、(自分の書いたもののな…

浮遊感

自分で言うのもなんだけれども、それなりに名の通った進学校に通い、いわゆる有名大学を卒業して、大企業ではないけれどもまずまず有名企業で勤続20年になる。おそらく、経歴だけを見れば、まるで日本社会の主流にいるような印象を与えると思う。実際、客観…

気持ちいい音

この10月から自分の直属の上司が異動になり、その代わりに私がそのポジションにつくことになった。一昨日の夜、そのかつての上司と飲みに行って、いろいろと「大人の話」をした。 といってもふたりきりでずっと「大人の話」だけをするのは辛いので、話はいろ…

第二言語学習者とクレオール

Lang-8(http://lang-8.com/)で日本語学習者の日本語を読んでいると、いろいろなパターンがあっておもしろい。 完全に独習だというけれど、文法的にも完璧だし、ブログの文章としても自然で、日本人が外国人を語らっているのではないかと思うぐらいの日本語を…

現代的な国際化:在日ファンクときゃりーぱみゅぱみゅ

この前のエントリー(id:yagian:20110928:1317160068)で、箭内道彦「サラリーマン合気道」に触発されたという話を書いたけれど、さっそく一つまねをしてみることにした。 このウェブログのために小さなメモ帳を持ち歩いていて、ネタを思いついたときにメモを…

ごちゃごちゃ感覚

最近、箭内道彦「サラリーマン合気道」を読んだ。なかなか刺激的な本でだった。 もともと自己啓発系、ライフハック系の本はあまり興味がなかったのだけれども、心が弱っていたとき(うつ病で会社を長期休暇していた)に、スティーブン・コビー「7つの習慣」…

日本近代文学の死(2)

昨日のエントリー「日本近代文学の死」(id:yagian:20110923:1316721100)の続き。 「日本近代文学の死」といっても、日本語で文学作品が書かれなくなるという意味でもなく、日本語の文学作品を読む読者がいなくなるという意味でもない。 「やがて哀しき外国語…

日本近代文学の死

世の中の話題の移り変わりは早いから、もう、たいていの人が忘れてしまっているかもしれないけれど、水村美苗「日本語が亡びるとき」が賛否両論(賛成という声はほとんど聞かなかったが)を巻き起こしたことがあった。 この本の中で水村美苗が書いているけれ…

Is there Tokyo's Woody Allen or Spike Lee?

メグ・ライアンが主演した数多くのロマンティック・コメディのなかの一本に「恋人たちの予感」という映画がある。メグ・ライアンのロマンティック・コメディだから、大傑作とかそれを見ると人生が変わるとかそんなおおげさな映画ではないけれど、気に入って…