読書

大阪の文楽

今、谷崎潤一郎「蓼食う虫」を読んでいる。 その冒頭に、大阪道頓堀で人形浄瑠璃を見る場面があった。その場面を読んでいたら、大阪で文楽を見たくなった。 以前、京都の南座で藤山直美の芝居を見たことがあった。観客がみな藤山直美の笑いのつぼを心得てい…

東京のおばあさん

先日、つれあいに連れられて京都一乗寺の恵文社に行って、中条省平「クリント・イーストウッド」を衝動買いしてしまったことを書いた(id:yagian:20090710)。 これ以外にも衝動買いしてしまった本がある。円地文子「江戸文学問わず語り」である。これまで円地…

疲れた

今日は、上司の目を盗みサボりながら仕事をしていたけれど、なぜかいつもの日より疲れてしまった。疲れていたから、サボったということもある。サボっていたから気疲れしたのかと思い、仕事をしたら、やっぱり疲れてしまった。今日は、仕事をしてもサボって…

眼明らかなれば

毎日ウェブログを書いていたときは、日常生活のちょっと空いた時間で頭の中で文章を練っていたから、キーボードに向かうときには書くことは大体できあがっていて、それを書き写せばよかった。しかし、最近はすっかりウェブログを書く習慣がなくなって、頭の…

美しく心地よいお話

この週末、村上春樹の新作「1Q84 book1」と「1Q84 book2」を読んだ。これから読むという人も多いと思うので、なるべく内容には触れずに感想を書こうと思う。 村上春樹の小説は、しばらくしてから読み直すとまた違った印象を受けることがあるから簡単に断定は…

宙づり

本屋の棚を眺めていたら村上春樹の短編集「TVピープル」が目に止まった。村上春樹の小説のなかで、これだけは読んでいなかったことに気がついた。もうすぐ「1Q84」が届くはずだから、その前の助走として読んでみようと思った。 「TVピープル」には短編小説が…

漱石の現代性

軽い読み物が読みたくなって、本屋でふと目に入った夏目房之介の「孫が読む漱石」を買った。 そのなかにこんな一節があった。 若い頃から、読んだというほど漱石を読んでいない僕が、何度も読み返す作品がいくつかある。 『夢十夜』『硝子戸の中』、そして『…

正確な描写

レイモンド・チャンドラー「さよなら、愛しい人」のなかに次のような一節があった。 その年のカレンダーの絵はレンブラントだった。図版の色の配合があまり良くなくて、おかげでその自画像はどことなく薄汚れて見えた。そこにいるレンブラントはしみったれた…

週末

この週末はなかなか充実した時間を過ごすことができた。土曜日の午前中はニューヨーク・ヤンキースとボストン・レッドソックスの試合をテレビで見て、午後には村上春樹が翻訳したレイモンド・チャンドラーの「さよなら、愛しい人」を読み、夕方にはつれあい…

虚構への共感

このところ、調子はそれほど悪くなかったけれど、なぜかウェブログを書く気がなかなか湧かなかった。読書もあまり進まず、インターネットからも離れていた。 かつてはいつも本を持ち歩いていて、ちょっとした隙間の時間があれば本を読んでいた。けれども、最…

「あの女」と「その娘」

「あの女」といってもアイリーン・アドラーの話ではない。 「彼岸過迄」を読み終わり、今度は「行人」に取り掛かっている。 漱石の小説群のなかで、「三四郎」「それから」「門」が前期三部作と呼ばれ、「彼岸過迄」「行人」「こころ」が後期三部作と呼ばれ…

衒気

頭の中の霧が晴れて、ひさしぶりに本を読む気が湧いてきた。本棚を眺めて漱石の「彼岸過迄」を手に取った。漱石自身が書いた前書きにこんなことが書いてあった。 ……ただ自分らしいものが書きたいだけである。手腕が足りなくて自分以下のものが出来たり、衒気…

あはれなるわざなりけり

古本屋から対訳注釈付きの「源氏物語」一式と橋本治「窯変源氏物語」一式を買って、一回挑戦して挫折して以来、ずいぶん長い間積ん読状態が続いていた。ふと読んでみようと思い、再挑戦することにした。 一帖ずつ、まず、「窯変源氏物語」で大意をつかんで、…

精巧な小説

以前、丸谷才一のコラムについて、「うまい」けれども不誠実な印象があるということを書いたことがある(id:yagian:20050703:p3)。 彼の長編小説「笹まくら」を読み、その「うまさ」に感嘆した。全体の構成から細部まで考え抜かれて書かれており、手が抜かれ…

読書メモ:W・チャン・キム、レネ・モボルニュ「ブルー・オーシャン戦略」

題名だけを見て、際物のビジネス書かと思って敬遠していたのだが、フランス発のビジネス書というところに興味を惹かれ、また、「勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践」でも推薦していたので、読んでみることにして…

読書感想文

川上弘美「古道具中野商店」を読み終えた。 この本の読書感想文を書こうと思っているけれど、どうも言葉が出てこない。 読書感想文を書くということは、読書に触発されて自分のなかに生まれた言葉を書き連ねることだろう。この本を読み、気持ちが揺り動かさ…

登場人物が勝手に動き出すこと

丸谷才一の「樹影譚」を読んでいて、次のような一節が目に留まった。小説に登場する小説家古屋逸平の独白である。 ……作者と作中人物の関係について、古屋は普通とは違ふ見方をしているので、作中人物はしばしば、作者の意識に支配されず自在に行動し、語り、…

ベストセラー作家を読む、恩田陸「ユージニア」

東野圭吾に続いて恩田陸「ユージニア」を読んでみた。 東野圭吾は「秘密」を読んで、彼の作品のことはだいたいわかった気になった。だから、これ以上読む必要はないだろう。 「ユージニア」を読み、いろいろなところに引っかかった。その引っかかりが、雰囲…

ベストセラー作家を読む

いま、久しぶりに本を読めるような体調になり、時間もあるから、普段は手にとらないようなものも含めていろいろな本を読もうと思っている。 その一環として、いわゆるベストセラー作家の本を読んでみようと思い、まず最初に、東野圭吾「秘密」を読んでみた。…

翻訳と思考

10/25のエントリー「言葉とイメージ」(id:yagian:20081025:1224900080)で紹介したバーバラ・ミント「考える技術・書く技術」の練習本「考える技術・書く技術ワークブック上・下」の練習問題を、仕事の手すきの時間に解いている。 練習問題の多くは、例文の構…

とろけるような甘さ

最近読んだ本は、仕事のための勉強用のものが主で、読書のための読書ではなく、何かの役に立てようと思って読むものばかりだった。 勉強用の本といっても、なかなか興味深い本が多く、それはそれで楽しい読書ではあるけれど、うるおいには欠ける。 気分転換…

言葉とイメージ

森博嗣のウェブログ"MORI LOG ACADEMY"の「文系・理系よりも」(http://blog.mf-davinci.com/mori_log/archives/2008/10/post_2173.php)というエントリーをきっかけとして、言葉とイメージの関係について考えた「代数系と幾何系」(id:yagian:20081022:1224655…

読書メモ:「勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力」

しばらく前のエントリーで、ひたすら眠く、本を読んだり、ウェブログを書いたりする時間がとれないということを書いた(id:yagian:20081010)。 しかし、ここ数日、ひたすら眠い時期は終わり、睡眠のリズムがむしろ不眠の方に振れてきて、本を読む時間ができる…

新聞の片隅から(3)

日経新聞の経済教室の下に、「やさしい経済学」という横長、横書きの欄がある。今日は、「経営学のフロンティア 人材育成と企業競争力」の連載の第一回「永遠の経営課題」である。 ここにちょっと印象に残った言葉があったので引用したい。 ……人材の内部育成…

批評の批評

図書館で借りて来た伊藤剛「テヅカ イズ デッド」を読んだ。 以前、買って読んだのだが、今ひとつだと思って、古本屋に売ってしまった。今になって、どう今ひとつだったのか思い出せず、それが気になって、今度は図書館で借りて読むことにした。 結論として…

よくあること

今、いわゆる日本版SOX法について知識を得ようと思い、佐藤孝幸「内部統制がよくわかる講座」を読んでいたら、こんな一節があった。 「小口現金担当者が風邪で休んだため、代わりに出納係の同僚が小口現金担当者の机に座って仕事をしていたところ、その担当…

読書メモ:高間邦男「学習する組織」

ここのところ、経営学に関するさまざまなトピックを追いかけて本を読んでいるが、さまざまな角度から検討されているものだと感心する。たしかに、経営を成功させることは難易度が高く、しかも、それを望む人は多い問題である。多様なアプローチがあって当然…

実践とボトムアップを組み合わせていこう

ここのところエリヤフ・ゴールドラットが提唱しているTOC(Theory of Constraints)に関連した本、ゴールドラット「ザ・ゴール2」「クリティカル・チェーン」岸良裕司「目標を突破する実践プロジェクトマネジメント」「全体最適の問題解決入門」を続けて読ん…

「道具箱(ツールキット)としての文化」と「ブリコラージュ」

うつとほぼ同時に腰痛になった。最近は、腰に違和感を感じるぐらいで、痛みは感じない程度で済んでいる。しかし、朝起きる時は、慎重に身体を起こすことにしている。 今までは和室に布団を敷いて寝ていたけれど、腰痛のことを考えて、腰にやさしいベッドを買…

異文化摩擦を乗り越えるには

今月ももう数日になってきたけれど、相変わらず仕事を半分、勉強を半分ぐらいで会社の時間を過ごしている。 前にも書いたけれど、10月以降は異動する予定である。今日の仕事は、今いる部署の来月以降の仕事にかかわる企画書の作成である。自分自身が携わら…